接種するリスク、しないリスク

子宮頸がん予防ワクチンについて考えるとき、念頭に置いてほしいのは、どんなワクチンにも副反応のリスクは必ずあるということ。それから、ワクチンを接種しなければ、重大な病気にかかるリスクがある、ということです。ワクチン接種は、病気やワクチンを理解し、自分やわが子にとってどちらのリスクがより問題になるか、考えた上で受けることが重要です。

厚生労働省によると、子宮頸がんに罹患(りかん)する人は、年間約1万人(2008年)、死亡数は年間約3,000人(2011年)。女性特有のがんでは2番目に多いがんで、女性の100人に1人が、生涯のどこかで子宮頸がんを発症するとも言われています。それに対し、ワクチン接種後に重とくな副反応が出るリスクは、アナフィラキシーの場合で約96万接種に1回、ギラン・バレー症候群で約430万接種に1回、急性散在性脳脊髄炎(おう吐や意識の低下が起こる脳などの神経の病気)で約430万接種に1回と、極めてまれです(いずれも平成25年3月末時点の報告より)。

ほかに原因不明の体の痛みなどの事例が問題になっているのも事実ですが、厚生労働省の検討会では、ワクチン接種の有用性と比較して、そうした副反応のリスクは定期接種を中止するほどには高くないと判断されています。世界に視野を広げると、欧米を中心に100カ国以上で子宮頸がん予防ワクチンが使用されていて、世界保健機関(WHO)が接種を推奨していることも、参考にしたい情報の一つです。

検診を受けることも有効

とはいえ、ワクチン接種後の慢性的な痛みに悩まされている人たちが現実にいて、国が「積極的な推奨はしない」という姿勢をとっている状況下で、多くの人が接種を思いとどまるのは無理もないことです。

また、子宮頸がんを予防するには、検診を受けることも有効です。定期検診でがんになる前の病変を発見できれば、がんに進行する前に治療できるからです。セックスの経験がある女性は、必ず年に1回の定期検診を受けましょう。子宮頸がん予防ワクチンの接種をしていない人はもちろんですが、ワクチンの効果は100%ではないので、接種済みの人も定期的な検診は必須です。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など