イベントの中盤には、アクシス取締役で多摩美術大学教授の宮崎光弘氏を中心に、2回のトークセッションを実施。1回目はポータブル超単焦点プロジェクターやグラスサウンドスピーカーの各設計開発担当者と、両製品の開発経緯やコンセプトについて語った。
ポータブル単焦点プロジェクターの設計開発担当である松田氏は、コンシューマーに向けた小型プロジェクターがこれまでに存在していなかったことを指摘。プロジェクターを身近な存在として体験してもらうべく「置くだけでストレスなく絵を出せる」というテーマを設定し、ポータブル単焦点プロジェクターの開発に着手したという。同製品はオートフォーカス機能を搭載し、まさに「置くだけで」映像を投影できるよう設計。さらに、電源ボタン以外の操作キーや電源ケーブルを排除したシンプルなプロダクトデザインを採用した。静音化にも取り組んでおり、ユーザーが愛着をもって使用できる製品に仕上げたという。
製品化にたどり着くまでの取り組みも紹介。2013年に行われた夏祭りイベントの最中に、当時のプロトタイプを使って平井社長にプレゼンしたこともあったという(プレゼンの際には担当者が「RGB」とプリントされたTシャツを着てアピールしたという秘話も明かされた。しかし平井社長の反応は「ふつう」だったそう)。本格的に製品化に向け動き始めたのは、Life Space UX事業を行うTS課が発足した2014年のこと。製品としてのポータブル単焦点プロジェクターは、Life Space UXのコンセプトと出会うことで完成したことが伺える。
グラスサウンドスピーカーの設計開発担当者である鈴木氏は、インテリアに溶け込む「音の噴水」を作りたかったと語っていた。製品のキーワードであり条件は、1本でスピーカーとして成立すること(One Speaker)、360度音が広がること(360 degree Sound)、透明であること(Transparency)の3つ。これらの実現のため鈴木氏は、加振器で有機ガラス管をたたき360度方向に音を広げる「バーティカル・ドライブ・テクノロジー」を独自開発。同技術は2008年に発売された全長約1m・約1,000,000円のガラス製スピーカー「サウンティーナ」に採用された。
開発陣は、サウンティーナのオリジナル価値をより多くの人に届けたいとし、大胆な小型化と高音質化、低価格化を実現したグラスサウンドスピーカーの開発に着手した。完成した製品は、サイズがワインボトル程度、価格が税別74,000円前後となり、サウンティーナよりもユーザーとの距離が近くなっている。
2回目のトークセッションのゲストはデザインエンジニアの田川欣哉氏とジャーナリストの林信行氏。「音と光と空間の可能性と、体験のデザイン」をテーマに、Life Space UXの取り組みを語った。
田川氏は今回発表された2製品に、背面、裏面、側面という概念が存在しないことに着目。「技術的制約がある中、このように全方位からアプローチできる製品が形になったことがすばらしい」と話した。ジャーナリストの林信行氏は「これがあれば一日豊かな気持ちで過ごせる」というような、空間×家電が生み出す体験に期待を寄せていた。
ポータブル単焦点プロジェクター「LSPX-P1」とグラスサウンドスピーカー「LSPX-S1」は今後、アルフレックスショップ・ショールームでの体験イベント、星野リゾート・デザイナーズコテージへの設置、製菓メーカーベイクとのコラボレーションイベントなど、通常の家電とは異なる切り口でプロモーションを行っていくとのこと。空間×家電という体験を、ユーザーにより深く訴求することが目的だ。家電が持つ「違和感と制約」に問題提起し、家電の新時代に向けてアプローチを仕掛けるLife Space UX。今後のラインナップ拡充と、さらなる提案に注目したい。