有望な社員ほど辞めてしまう会社の経営者と管理部門の方へ
有能な社員がやめてしまうことは、経営者にとって何よりつらいことのひとつです。特に営業職は成果が数値化しやすいので、正当に評価されず、自らの成長にもつながらないと感じた社員は、これからも退社してしまうでしょう。
社歴が短くとも優秀な人材を抜擢する。まわりの社員もそれを歓迎する。そんな場をつくるための評価制度の改革が現場から望まれていると推測します。
ただし短絡的に個人成果主義を導入するのは危険でしょう。個人主義が社風となり、チームで人脈やノウハウを共有しなくなるからです。相対評価の導入も慎重にすべきです。まわりを助けることが自分の評価を落とすことに直結するからです。チーム力を高めるためには、次の3つがポイントとなります。
「ソーシャルキャピタル」時代の評価体制へ
1つ目は、評価対象を個人ではなく、チームにすることです。これまで企業は「ヒューマンキャピタル(社員個人の能力)」を資本と考え、それを高める人事政策が主流でしたが、社会学や経営学の研究が進んだ結果、今ではむしろ「ソーシャルキャピタル(社員間のつながり)」が組織に価値をもたらすことがわかってきました。数字によって人間関係を分断するのではなく、人と人とが密接に結びつき、コラボレーションの力で勝負する時代です。いかに社内で善い信頼関係を育むか。そこに会社の成長がかかっているのです。
2つ目は、成果だけでなく、プロセスも評価に取り入れることです。特に業務を改善したり新しいアイディアを創造する「創意工夫行動」と、知見を共有したり仲間をフォローしてチームを支える「支援行動」を見逃してはいけません。これらはいずれも短期の営業成果には直結しないため、数値化しにくい部分です。縁の下の力持ちの行動をきちんと汲み取ることで、人のつながりが生まれ、有望な人材の流出も防げるのです。
3つ目は、チームの成果や評価をできるだけ全社オープンにすることです。上司が管理するためではなく、チームメンバーが新たな創意工夫をするためのツールと位置づけるのです。トップが賞罰を用いて社員をコントロールするのではなく、現場の内発的動機づけを刺激し、それを会社として徹底的に支援することです。ただし、個人の評価は安易にオープンにしないでください。社員のモラルが著しくダウンさせ、チームの助けあいを分断させてしまいます。オープンにするのはチーム単位とする点に注意してください。
ご参考まで、このようなケースでは、評価制度の改革以外にも、キャリアパスにそった人材育成、社内SNSによるコミュニケーション活性化、オープンリーダーの育成などを同時に行うと、より効果的なチーム運用が図れると思います。
いずれにしても、現場社員の悩みは、結局、めぐり巡って業績に跳ね返り、長期的には経営者や本社部門のクビを締めることにつながります。現場社員の役目は顧客に奉仕すること。本社社員の役目は現場社員に奉仕すること。社員が幸せに働けるよう、ぜひいろいろ知恵を働かせてみてください。