海外療養費制度の仕組みと申請方法
還付される金額は、日本国内の医療機関などで同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額を差し引いた額です。外貨で支払った場合は、支給決定日の外国為替換算率(売レート)によって円に換算された金額になります。
例えば、「アキレスけん断裂」で現地の病院で入院、手術を受けたとしましょう。重いスーツケースを持って歩いたり走ったり、階段を上がったり……なんてことの多い海外旅行では、案外よくある症例です。
日本の医療機関で治療したと仮定すると、アキレスけん断裂にかかる医療費は約42万円(健康保険組合連合会 大阪中央病院のホームページ参照。差額ベッド代などを考慮せずに計算)。この7割の29万4,000円が海外療養費として還付されるという訳です。
手続きには海外の医療機関の「診療内容明細書」と「領収明細書」が必要になりますので、忘れずにもらうようにしてください。帰国後、これらの書類の日本語訳および「療養費支給申請書」を添えて、健康保険組合や市区町村(国保の場合)などの自分が加入している保険者へ提出します。
海外旅行保険への加入も視野に
30万円近いお金が戻ってくるのは、とてもありがたい話です。ですが、もしも治療したのがニューヨークの病院だったら、約230万円~約360万円の医療費を請求されてしまうため、最低でも約200万円の赤字です(東京海上日動「世界の医療事情」参照)。
そうなってしまっては、わざわざ"借金"をつくりに海外に行ったようなもの。万が一に備え、海外旅行保険に加入しておくことも賢明な選択でしょう。
※写真と本文は関係ありません
筆者プロフィール: 武田明日香(たけだ あすか)
エフピーウーマン所属、ファイナンシャルプランナー。日本テレビ「ZIP!」やTBSテレビ「あなたの損を取り戻せ 差がつく! トラベル! 」、「Saita」「andGIRL」等の雑誌、「web R25」「わたしのマネー術」等のウェブサイトなど幅広いメディアを通じ、お金とキャリアの両面から女性が豊かな人生を送るための知識を伝えている。お金の知識が身につく初心者向けマネーセミナー受付中(受講料無料)。