こちらが請求した慰謝料の額に対し、「納得いかない」と減額の主張をされることはよくあることです。法外な請求をしている場合はもちろん、総合考慮の結果、「法的に高額」と判断されるは減額に応じねばならないこともあります。
その場合、上記の慰謝料の相場や、考慮事情等が参考になると思いますが、あくまで上記金額等は、「裁判に至った場合に裁判所が認定する金額」ということになります。裁判に至らない以上は、「合意しない限り金額は決まらない」わけですから、納得いかないまま減額に応じる必要はありません。最終的に納得のいく金額で合意に至ることを目指すべきです。簡単に減額には応じない、これが一番大事なことです。
証拠はしっかり保存を
また、請求する側が証拠をしっかり持っていた方が慰謝料を減額されずにすむという側面があります。裁判になった場合、証拠がないと負けてしまう可能性もありますので、「払ってくれないのであれば裁判を起こします」と強気で主張するためにも、不倫や暴力などの証拠はしっかり保存しておくようにしましょう。
例えば、不倫にまつわる写真やメール、暴力によるけがやうつ病等の診断書などは、大事な証拠となってきます。なお、証拠は初めから全て相手に開示するよりは、小出しにするか、裁判まではある程度隠しておくのが得策です。
「相手から離婚を申し入れられている。しかし法定の離婚原因がない」というケースは、相場よりも高額が期待できるケースです。法定の離婚原因がない以上、納得いかない離婚に応じるべきいわれはありません。慰謝料についても妥協しない姿勢でよいでしょう。
意地悪な言い方に聞こえるかもしれませんが、相手が法に訴えても離婚ができない以上、「絶対に離婚したい」のであれば、「それ相応の手切れ金を払ってください」ということになるわけです。こういったケースは「納得のいく金額を提示してくれるまで離婚はしません」という姿勢を貫くことによって、高額の慰謝料の獲得が見込めます。
離婚はやむを得ないとあきらめてしまい、しかも納得いかない金額で離婚をしてしまうと後々になって後悔する方も少なくありません。一方、納得のいく慰謝料を受け取れれば、仮に離婚せざるを得ない状況となっても、ある程度、気持ちを前向きに今後の人生をスタートさせることができる、そういった一面は否定できないと思います。
相手方に全面的に責任があるようなケースであれば、安易に妥協はせずに、しっかりと慰謝料を支払ってもらうことが大事です。悩んだときは、弁護士も頼ってくださいね。
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<著者プロフィール>
篠田恵里香(しのだえりか)
東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。
ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」