JR東日本とNREが出店する「EKIBEN」のイメージ(2015年10月本誌記事から)

さて、駅弁を「EKIBEN」として海外に売り出そうとする施策が活発化してきている。米穀安定供給確保支援機構だけでなく、日本の名だたる企業がEKIBENの推進に乗り出してきているのだ。その筆頭がJR東日本だろう。JR東日本とNREは、2015年10月にパリ・リヨン駅に「EKIBEN」の専門売店を期間限定で出店すると発表した。

フランスは、かねてより和食の人気が高かった国。2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されてからは、その傾向がより一層加速した。こうした流れをEKIBENで捉えようとしたのがこの施策で、日本ではお馴染みの「幕の内折詰弁当」や「おにぎり弁当」のほか、フランスのシャロレー牛を使用したオリジナル弁当「パリ・リヨン弁当」などの販売を予定する。ちなみに、これらのメニュー開発を担当した調理責任者が前出の白木氏だ。

だが、11月に発生したパリ同時多発テロにより、フランスに非常事態宣言が出された。その影響により、残念ながらこの施策は延期されたが、JR東日本もNREも、事態の終息をみて再度出店を試みる考えだ。

名物駅弁を訴求することで地元にインバウンドを呼び込む

一方、国内を訪れるインバウンド観光客へ「EKIBEN」の啓蒙を行っているのが、駅弁最大手ともいえる崎陽軒。同社は外国人観光客向けに、英語表記のパンフレットを作成し、神奈川・東京を中心に展開している約150店舗での無料配布を実施した。

店頭で無料配布されたパンフレット。邦人にもわかるように日本語が併記されている(崎陽軒ホームページより)

「駅弁という、日本ならではの独自文化を海外の方たちにも旅行のひとつの楽しみとして味わっていただきたいと考えてこの施策を始めました」(崎陽軒・広報担当者)という。 また、横浜名物として昇華した「シウマイ」を外国人に知ってもらうことで、観光地としての横浜の価値を高めるねらいもある。「インバウンド観光客が増加しているなか、横浜は決して優先順位の高い観光地ではありません。シウマイというメニューで横浜を訪れるきっかけにしていただきたいです」(同担当者)。

アレルギー表示やイスラム法に合するハラール表示など、国内向けとは異なる対応が必要になると前置きしながらも、「今回の施策の反応をみて、さらなる多言語対応を検討していきたいです」(同担当者)とした。こうした外国人の理解を得られる取り組みが進めば、“食べられないものが入っているかもしれない”という不安が取り除け、中身がみえないパッケージでも手に取ってもらえるようになるのではないだろうか。