「商品開発からリスク管理、マーケティングまで ――デジタルビジネス時代のデータ活用方法を探る」と題した「マイナビニュースフォーラム2015 Winter for データ活用」が12月11日に開催された。成功事例やデータ活用のトピックスを紹介する多彩な講演の中、「未来を変えるBIG DATA 生命保険にどう生かす」というタイトルで語ったのは、アクサ生命 取締役 専務執行役 兼 チーフマーケティングオフィサー 松田貴夫氏だ。
松田氏は冒頭、「保険はデータに非常に敏感な業界」と述べた後、保険業界の変化と実情について紹介した。
その中で語られたのは、基本的に保険の制度設計は創設当時から大きく変化していないということだ。加入者のプロフィールからリスクを分析し、そのリスクに応じて負担金を集め、実際にリスクが発生した場に分配する。保険会社はその運営費用を集まった資金から得るという形態だ。
このリスク分析は、一般的に年齢と性別で行われる。しかし、年齢と性別さえ同じならばリスクは同じなのかということには疑問が残る。日常的に運動をしている人とそうでない人、健康に気を使っている人といない人では変化するはずだ。しかし、それをしっかりと分析することはこれまで不可能だった。ただ、近年は海外で遺伝子診断により自分のリスクを「見える化」する方法が出てきたという。同じように、詳細な健康情報を利用することで新しい形でのリスク算定と、それに基づいた商品開発が行える可能性は十分にあるという。
また、松田氏からは予防的な考え方へのシフトも語られた。医療費抑制の必要性や高齢化社会における健康寿命の重要性、今後拡大が懸念される医療格差等に触れた上で、保険会社も、リスクが発生した際に保険金を支払うといったこれまでの事業領域以外の動きが必要だというのだ。
「当社規模だと年間千数百億の保険金、給付金をお支払いします。多くは死亡保険金や入院・手術に対する給付金です。これは大変な状況になった後にサポートする形ですが、場合によっては、もっと早い段階でほしかったという方もいらっしゃると思います。たとえば1,200億円の保険金のうち、1,000億円を従来と同じ形で支払い、200億円を予防や病後の職場復帰へのサポートなどの形にしたら、お客様がもう少し幸せで健康な生活を送るサポートができるのではないかと考えるのです」と松田氏は、保険金の払い方を変える可能性を語った。
この、新しいリスクの算出による保険商品の開発と、予防やサポートという形でのサービスの開発に役立つのがビッグデータだという。