Backlight Master Driveの仕組みと能力

ここでBMDの話に戻るのだが、簡単にいえばBMDも直下型のバックライトとそれに最適化した映像処理技術の総称である。ただし、そのクオリティは過去の直下型をはるかに超える。発色もコントラストも、「液晶より有利」と呼ばれる有機EL (OLED) にかなり近いものが実現できているのだ。

液晶ではどうしても「黒が黒くならない」という難点があったし、OLEDも「トップ輝度が高くならない」という難点がある。しかしBMDでは、黒がOLED並みに黒くなり、さらにはトップ輝度は、OLEDどころか最新の液晶テレビをも超える「最高4,000nit」を実現した。夕日の光で暖かさを感じる……と思ってしまうくらい、リアリティのある「明るさ」が表示されていた。

BMDの秘密はバックライトにあり、背面には1,000個以上の高輝度LEDがずらっと並んでいる。プレスリリースでは「1,000以上」とされているが、実際には、バックライトが明滅する部分を「1,000を大きく超えるが3,000はない」くらいの数に分割しているそうだ。通常のバックライトでは数十から数百までのわりと荒い分割なので、バックライトの光だけを見ても、モザイクがかかった映像のようにしか見えない。

だが、BMDほど細かく多数の分割をすると、バックライトの濃淡を見るだけで、実際の絵がどうなるのかわかるほどだ。

Backlight Master Driveのデモ映像。同じ絵をバックライトだけで見ても、文字などのディテールまで見えてくることに注目

通常、ここまで多数のバックライトを配置し、輝度も最高4,000nitまで上げると、LEDの発熱が増えて消費電力が高くなり、一般家庭向けとは言えないものになりがちなのだが、BMDではその問題も解決している。CESで展示された85インチのデモ機は、ソニーの現行テレビと消費電力は変わらず、ファンなどの特別な冷却機構は不要だという。暗い部分で電力を使わないようにし、明るくなる部分にだけ集中する機構を改善したこと、放熱や消費電力に配慮した配置にしたことなどが理由だという。

BMDが搭載されたテレビは、そのバックライト数もあり、さすがにかなりの高級機となりそうだ。また、発売時期も公表されておらず、少なくとも2016年中の製品化はなさそうだ。しかし、これが出てくると、高画質テレビの競争がまたワンランク違うレベルになりそうで、非常に期待が持てる。