―― ハイレゾオーディオの世界展開の状況はどうでしょうか。
平井氏:ハイレゾのような新しいプラットフォームを浸透させることは、米国市場では難しいと考えていたが、Best Buyが本格的に扱いはじめており、今回のCES 2016においても、Best Buyの幹部と議論する機会を得た。米国でもビジネスとして、ハイレゾオーディオを考えてもらえる状況に入りつつあると認識している。
まだ日本のようにはいかないが、いい音に対する機運が高まってきており、普及に向けた入口にきたと考えている。欧州では、国によって状況は違うが、Qobuzがサービスを開始するなど、徐々にハイレゾオーディオが認知されはじめている。かつてのMDのように、日本では盛り上がっているにも関わらず、海外ではまったく……という状況にはならないと考えている。
全世界的な展開は、しっかりと時間をかけていくつもりだ。ソニーが目指している感性価値を訴求するには、店頭で体験していただくことが大切。ハイレゾオーディオも4K HDRも、体験してもらうことが一番。ネットでの販売強化も大切だが、店頭で体験してもらうことの価値をこの1、2年で改めて感じている。
―― 4K配信サービスの「ULTRA」を米国市場で展開するという発表をしましたが、日本においてはどうなりますか。
平井氏:今は日本で自社サービスとして展開することは考えていない。NETFLIXをはじめ4K映像配信サービス会社に対して、コンテンツを提供する側にまわることになる。かつては、配信サービスを自前で持つことが、ハードウェアを広げるための方策であったが、今の時代は、国や地域の状況の違いを捉えながら、コンテンツビジネスが成り立つのか考えなくてはならない。ソニー・ネットワークエンタテインメントに赤字覚悟でビジネスをやってくれとはいえない。時期を見て考えたい。
―― 2015年度は、モバイル事業の再建が重要な経営課題でしたが、その進捗はどうですか。
平井氏:ソニーモバイルコミュニケーションズの構造改革は予定通りの進捗である。日本の市場では、Xperiaシリーズが高い評価を得ているが、引き続きハイエンド領域において、ソニーらしさを出した製品を出すことで、事業環境の変化にも対応していきたい。
スマホは全世界でマーケットシェアを取りに行くのではなく、ビジネスとして成立する市場に力を注いでいる。北米、中国ではビジネスを縮小しているのはそのためで、赤字覚悟でやるということは考えていない。ただ、ずっとこのままでいいというわけではなく、足下が強くなったところで、北米、中国市場に改めて出ていく。スマホは大切な商品であり、スマホの次の世界をどう描くかという点でも、今の世代で技術を蓄積する必要がある。
モバイル事業は、次の成長シナリオが描けるフェーズに入れるかどうかが課題である。バラ色のシナリオを描いているわけではない。縮小市場があったり、買い替えサイクルが伸びているという状況もあり、慎重にみている。