探査機「ニュー・ホライズンズ」の冥王星への接近、小惑星探査機「はやぶさ2」の地球スウィングバイの成功、金星探査機「あかつき」の金星到着、またロシアのロケットや衛星の相次ぐ事故、「ファルコン9」ロケットによる世界初のロケット着陸の成功、そして中国の新型ロケット「長征六号」と「長征十一号」の打ち上げ成功など、さまざまな話題にあふれた2015年が幕を閉じた。

そして2016年もまた、昨年に負けず劣らず、多くの興味深い宇宙開発の話題が待ち構えている。

今回は、今年予定されている数多くのロケットの打ち上げや探査機の活動の中から、特に注目したいものを紹介する。

なお、日時はすべて1月6日時点での予定に基づくものであり、今後延期される可能性もあるので、ご留意いただければと思う。また文末に、ロケットの打ち上げ予定を掲載しているWebサイトを紹介しているので、最新の情報はぜひそちらをご参照いただきたい。

1月18日: 「ファルコン9」ロケット、海洋観測衛星「ジェイソン3」打ち上げ 着陸試験も

ジェイソン3は米国と欧州が開発した海洋観測衛星で、海面高度の変化や、地球温暖化による気候の変化などを観測することを目的としている。

そして何より、この打ち上げでは「ファルコン9」ロケットの第1段機体の着陸試験が実施される。ファルコン9は昨年12月にも着陸に成功しており、今回も着陸できれば2機連続での成功となる。

打ち上げ場所は前回とは異なり、太平洋に面したカリフォーニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から行われる。ヴァンデンバーグにも着陸できる施設はあるものの、陸上に降りるのか、それとも海上に浮かべた船の上に降りるのかはまだ不明である。

昨年12月21日に成功した「ファルコン9」ロケットの着陸の様子 (C) SpaceX

2月7日: 「ドラゴン」補給船運用8号機(SpX-8)打ち上げ、膨張式のISSモジュール「BEAM」を搭載

この打ち上げでもファルコン9が使われるため、着陸試験を実施するのかどうか、そして成功するのかどうかが注目されるが、同時に積荷である「ドラゴン」補給船運用8号機に搭載される、「BEAM」と名付けられた膨張式のモジュールにも要注目である。

BEAMはBigelow Expandable Activity Moduleの略で、ビゲロゥ・エアロスペース社という会社が開発した、空気で膨らませる形式の国際宇宙ステーション(ISS)モジュールである。打ち上げ時には折りたたんでおき、宇宙で空気を入れ、風船のように膨らませるタイプのモジュールであれば、ロケットの容積にとらわれず、広い空間をもつモジュールを打ち上げることが簡単になる。

ただ、金属製のモジュールとは違い、耐久性などの問題があるため、今回はまず実証試験という位置付けである。同社はいずれ、この技術を使い、宇宙ホテルを実現したいという展望をもっている。

ISSに結合された「BEAM」の想像図 (C)NASA

2月12日: H-IIAロケット、X線天文衛星「ASTRO-H」を打ち上げ

「ASTRO-H」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心に、国内外の大学や研究機関が開発したX線天文衛星で、昨年運用を終えた「すざく」の後継機として、日本が長年続けてきたX線天文学の研究を続ける。

またH-IIAロケットはこの打ち上げで30号機という大台に乗り、さらなる連続成功が期待される。

X線天文衛星「ASTRO-H」

3月2日: 1年間のISS滞在が終了、宇宙飛行士が帰還へ

昨年3月28日から、約1年間の国際宇宙ステーション(ISS)での滞在に挑んでいる国営ROSKOSMOS社(旧ロシア連邦宇宙庁)のミハイール・カルニエーンカ宇宙飛行士と、米航空宇宙局(NASA)のスコット・ケリィ宇宙飛行士の2人が、ミッションを終えて地球に帰還する。

通常、ISSの滞在は半年間ほどが基本で、1年間は史上最長となる。この間に得られたデータなどの知見は、将来人類が火星や小惑星、さらにその先の宇宙へ向けて長期の宇宙航行に挑む際に役立てられる。

スコット・ケリィ宇宙飛行士(左)とミハイール・カルニエーンカ宇宙飛行士(右) (C)NASA

3月14日~25日: 欧露共同の火星探査機「エクソマーズ2016」打ち上げ

欧州宇宙機関(ESA)とロシアが共同開発した火星探査機「エクソマーズ2016」が、この間にロシアのプラトーンMロケットで打ち上げられる。

エクソマーズ2016は火星を周回する「トレイス・ガス・オービター」と、火星地表への着陸技術を実証する「スキャパレッリ」の、2種類の探査機から構成されている。火星までは約7カ月の旅路で、今年10月に到着する予定となっている。

また2018年には、スキャパレッリの成果をもとに開発された、本格的な着陸機と探査車(ローヴァー)の打ち上げも予定されている。

トレイス・ガス・オービター(左)とスキャパレッリ(右) (C) ESA