秋ドラマ17作のベスト作品&俳優発表! 『下町』なぜヒット? 視聴者ニーズに変化アリ

各作品のひと言コメントと採点(3点満点)

『5→9～私に恋したお坊さん～』　月曜21時～　フジテレビ系

出演者:石原さとみ、山下智久ほか
寸評:最後までブレずにポップなラブコメを貫いたが、揺れ動く恋愛感情や「なぜ好きになったのか」という芯の部分は消化不良。『恋仲』に続いてライバルの存在感が薄く、応援や共感などの感情移入は今一つ。ただ、すっかり恋愛に戻った月9は、往年のファンに加え、若年層へのアピールに成功。
採点:【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆☆　総合☆】

『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』　火曜22時～　フジテレビ系

出演者:松坂桃李、木村文乃、菜々緒ほか
寸評:サスペンス、アクション、恋愛、セクシーなど、さまざまな要素で焦点がボヤケそうだったものの、菜々緒のインパクトが全てをカバー。脚本も演出もツッコミどころだらけだが、サスペンスはこれくらいぶっ飛んでいるほうが楽しい。「視聴者に真相や結末を予想させる」連ドラらしさも好印象。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆☆　視聴率☆　総合☆☆】

『結婚式の前日に』　火曜22時～　TBS系

出演者:香里奈、鈴木亮平、遠藤憲一ほか
寸評:久々の難病モノだったが、昨今の視聴者感情を考慮してか、悲壮感あるシーンは少なく、終始家族愛を中心に描いた。残念だったのは「病気だから言える」ヒロインのセリフが少なかったこと。助演たちが懸命に香里奈を支えていたが、もう少し見せ場を作ってあげてもよかった気がする。
採点:【脚本☆　演出☆　キャスト☆☆　視聴率☆　総合☆】

『偽装の夫婦』　水曜22時～　日本テレビ系

出演者:天海祐希、沢村一樹、内田有紀ほか
寸評:「同性愛者との夫婦生活」という“出落ち”感の強い筋書きと思いきや、そうではなかった。ヒロインがゲイに本気で恋して戸惑い、心の声が本当の声になるなど、中盤では脚本の妙がキラリ。ただ、破局後に復縁して「偽装の夫婦としてハッピーエンド」の結末はご都合主義。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆☆　総合☆☆】

『無痛～診える眼～』　水曜22時～　フジテレビ系

出演者:西島秀俊、伊藤淳史、伊藤英明ほか
寸評:シリアスなムードとスタイリッシュな映像で、視聴者の心をわしづかみにしていたが、終盤に失速。もともと黒幕と実行犯が予想しやすい筋書きだけに、動機や手口が鍵を握っていたが、想像以上にあっさり。主人公の持つ2種類の特殊能力も「なぜ必要だったのか？」という説得力に欠けた。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆　総合☆☆】

『おかしの家』　水曜23時53分～　TBS系

出演者:オダギリジョー、尾野真千子、勝地涼ほか
寸評:ゆるい世界観から一転。胸を締めつけられるような終盤の展開は、脚本の妙。最愛の祖母に名前を忘れられた主人公の哀しさが涙を誘った。途中で「天使の声」という飛び道具のほか、「家を売るきっかけが野良猫」などの遊び心もしっかり。監督の要求に静かな熱演で応えたキャストへ称賛を。
採点:【脚本☆☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　視聴率☆　総合☆☆☆】

『ぼんくら2』　木曜20時～　NHK

出演者:岸谷五朗、風間俊介、松坂慶子ほか
寸評:第2弾も江戸の人情や町の風情は変わらず。終始スタッフとキャストの丁寧な仕事ぶりが光っていた。ひょうひょうとした岸谷の演技は安定感であふれ、決して不自然なヒーロー像になることはない。あっさりとした終わり方も、成長著しい子役たちも、「また見たい」と思わせてくれる理由に。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆　総合☆☆】

『遺産争族』　木曜21時～　テレビ朝日系

出演者:向井理、榮倉奈々、岸部一徳ほか
寸評:ひたすら「遺産」のみに徹して最後まで描いた姿勢は潔さを感じるほど。その分、大きな出来事がなく、マンネリを感じた視聴者も多かっただろうが、舞台を思わせる会話劇で俳優の魅力を引き出していた。「お金は燃えたが家族の絆が生まれた」という単純な結末は、井上由美子脚本らしくない。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆☆　総合☆☆】

『オトナ女子』　木曜22時～　フジテレビ系

出演者:篠原涼子、吉瀬美智子、江口洋介ほか
寸評:アラフォーの人気俳優をそろえたが、ひと昔前のステレオタイプな心理描写が目立ち、視聴者の望む共感や応援、ドキドキさせるシーンがほとんどなかった。不振を受けてのテコ入れでやや立て直したが、その影響で回収できない伏線も。ラストシーンの街頭ディープキスが「オトナ女子」の恋？
採点:【脚本☆　演出☆　キャスト☆　視聴率☆　総合☆】

『青春探偵ハルヤ』　木曜23時59分～　日本テレビ系

出演者:玉森裕太、新川優愛ほか
寸評:ハルヤをはじめとする若者の純粋な正義感は、今の時代には新鮮。結末で必ずスカッとさせる筋書き、コンパクトな謎解き、玉森と新川というビジュアルに優れたコンビなどのシンプルなコンセプトで、深夜ドラマの気楽な世界観を作っていた。エピソードの質に差があったのが、やや残念。
採点:【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆　視聴率☆　総合☆】

『釣りバカ日誌～新入社員 浜崎伝助』　金曜20時～ テレビ東京系

出演者:濱田岳、広瀬アリス、西田敏行ほか
寸評:最後まで「映画版のイメージを壊さず、ファンを大切にしよう」という姿勢を徹底。ハマちゃんとスーさんだけでなく、ほとんどのキャラがほのぼのとしたムードを醸し出し、視聴者を笑顔にさせていた。吹越満を筆頭に助演の貢献度も高く、同キャストとスタッフで、続編も映画化も可能か。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆☆　視聴率☆☆　総合☆☆】

『コウノドリ』　金曜22時～　TBS系

出演者:綾野剛、松岡茉優、吉田羊ほか
寸評:派手さを捨てて、出産の現実を忠実かつ繊細に描こうとする姿勢が感動を誘った。綾野は文句なしのハマリ役だったが、前に出さず病院全体のチームワークに配慮した演出にも好感。過去の同類作よりも赤ちゃんの出演シーンが多く、撮影の苦労は大きかっただろうが、続編を望む声は多い。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　視聴率☆☆　総合☆☆☆】

『サムライせんせい』　金曜23時15分～　テレビ朝日系

出演者:錦戸亮、神木隆之介、比嘉愛未ほか
寸評:「過去ではなく現代へのタイムスリップ」に、幕末の志士を絡めた設定は、爆笑要素の宝庫。サムライが回転寿司や漫画喫茶に行くだけで、猛烈なミスマッチを呼んでいた。錦戸と神木が刀を合わせる立ち回りなど、動きのあるシーンも多く、欲を出さず小さな世界の話に留めた脚本も好印象。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆☆　総合☆☆】

『孤独のグルメ season5』　金曜24時12分～　テレビ東京系

出演者:松重豊
寸評:枠移動に伴い、放送時間が7分間短縮されたが、大勢に影響なし。最後の「ふらっとQUSUMI」までしっかり楽しませてくれた。店のラインナップはどれも魅力的で、松重の食べっぷりも円熟味を感じる。台湾編に元旦特番と、さらなる進化もあるが、たまには「マズイ」というハズレも見たい。
採点:【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆　総合☆☆】

『掟上今日子の備忘録』　土曜21時～　日本テレビ系

出演者:新垣結衣、岡田将生、及川光博ほか
寸評:「1日で記憶がなくなる」という設定をフル活用。事件解決への道筋、天然ボケのキュートさ、恋愛面での切なさなど、さまざまな面で「なるほど」と思わせるものがあった。ライトノベルにフィットする字幕やイラストなどの演出も効果的で、あらゆる面で他の事件解決モノとの差別化に成功。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆☆　総合☆☆】

『下町ロケット』　日曜21時～　TBS系

出演者:阿部寛、土屋太鳳、杉良太郎ほか
寸評:福澤監督のタイトなカメラワークと長回しは健在。キャストに早口で話させてテンポのいい映像を実現させていた。ただ展開が早い分、登場人物の背景や心理描写が浅く、行動の動機づけがあいまい。視聴者を熱狂させた功績は大きいが、「2作を詰め込んだダイジェスト版」の印象も。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　視聴率☆☆☆　総合☆☆☆】

『エンジェル・ハート』　日曜22時30分～　日本テレビ系

出演者:上川隆也、三吉彩花、相武紗季ほか
寸評:上川の見事な役作りに称賛が集まる一方、物語への関心は高まらず。各話とも感動シーンをきっちり用意していたが、「家族愛」というテーマはそれほど掘り下げられなかった。何より残念だったのは、アクションシーンの少なさ。日曜夜に新宿の闇を描く作品は、相性が悪かったのか。
採点:【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　視聴率☆　総合☆☆】

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。