3社のスマートロック開発のきっかけとは?

居酒屋で仲間と飲んだ際に話が盛り上がったのが開発のきっかけだったというフォトシンスの河瀬航大代表は、「最初は、鍵をスマートフォンで開けたいというワクワク感といいますか、自分たちでやってみて、スマートフォンで鍵が開いたという驚きがありました。技術的にいけるのか、Bluetoothでいけるのか、そういう検証はずっとやってきましたが、実際、Bluetooth Low Energyが出てきたことが大きかった」と話す。

Qrioの西條晋一代表は「元々、米国を中心にIoTの動きを追っていて、面白いものがないかなと探していたところでスマートロックがありました。ホームオートメーションの分野であることを知り、自分で買って使ってみたんですが、まだあまりいいものがなかった」と米国のスマートロックを実際に手にした上での不満が開発につながったと語る。

L字型のボディで少ない設置面積で取り付けられる「Qrio Smart Lock」

Qrioの西條代表同様、自身の不動産を持つライナフの滝沢潔代表も「不動産で新しいことがしたい、空室をうまく使えるサービスをしたいと思っていました。実際の運営を考えたときに鍵が絶対必要で、米国のスマートロックを使おうと思ったのですが、取り付けられなかった」と米国製スマートロックが日本で実用にならなかったと話す。

Wi-Fiモジュールが搭載されたライナフの「NinjaLock」

各社代表の言葉を見ていくと、Bluetooth Low Energyの存在と、米国のスマートロックの特性、実はこの2点が国産製品の開発につながっていく。

スマートロック登場の決め手はBluetooth Low Energy

フォトシンスの河瀬代表が挙げた「Bluetooth Low Energy」はスマートロックを追う上で技術面において重要なキーワードだ。

Bluetooth Low EnergyとはBluetooth 4.0規格の一部で、低電力で通信が可能という特徴を持つ。ライナフの滝沢潔代表は「通信の技術ってどれもすごく消費電力が大きいもので、Bluetooth 2.0も3.0もWi-FiもSIMも、もし電池4本で使おうとすると1日2日で電池がなくなってしまう。Bluetooth 4.0が出てきたのが約3年ぐらい前です。それがスマホに搭載され始めたのが2年ぐらい前です」という。

従来のBluetoothではバッテリー消費が激しく、動力源を電池に頼らざるを得ない。そのため、製品を長期間利用するのは不可能だったが、Bluetooth Low Energyが登場し、消費電力を抑えられたことで実用的なスマートロックが可能になったというわけだ。実際、Bluetooth 4.0が出て、なおかつスマホにおいて使えるようになったタイミングで、スマートロックが米国で開発されるようになった。