「大丸有エリアマネジメント協会」は、オフィス街である“丸の内エリア”のレジャー活用にも積極的だ。そのメインステージとなっているのが「丸の内仲通り」。この通りは日比谷通りと大名小路に挟まれる格好で南北を約1.2kmにわたり貫いている。
「街が変わっていく様子をみなさまに体験していただきたい」
もともとこの通りは、幅21mのうち9mを車道が占めるアスファルト舗装の一般的な道路だった。交通量が多い日比谷通りの抜け道として利用されることもあった。だが、再開発により「歩道6m、車道9m、歩道6m」だった設計を「歩道7m、車道7m、歩道7m」に見直し。あわせてアスファルトから自然石(アルゼンチン斑岩)敷きにし、ケヤキを中心とした並木を植樹した。クルマ中心の通りから、歩行者中心の通りへと変化させている。
この通りを中心にさまざまなイベントが開催されている。夏は盆踊り、冬はイルミネーション点灯といった具合だ。特にイルミネーションは、2015年に14年目を迎える恒例行事となっており、行き交う人々に目にも彩な光景を映し出している。
また、この通りで昨年から「東京味わいフェスタ」が開催されている。これは10月に実施される行事で、丸の内や大手町、有楽町といった東京駅周辺の三菱地所のビルに出店するスーパーシェフ達により食育に取り組むべく組成された「丸の内シェフズクラブ」が、屋台やケータリングカーで道行く人に東京の食材を使った料理を提供するイベント。普段は高額なスーパーシェフのメニューをお手軽な価格で味わえることで、東京の食材に親しむキッカケとなれば、というものである。料理だけでなく、東京産の野菜や畜産品、伊豆諸島の名産などが購入できる。実はこのイベントは東京都の肝いりでもある。“TOKYO”を世界に発信するという目的をもったこのイベントも、東京駅前という日本を代表する場所・通りで実施されている。
「2015年3月に丸の内仲通りや行幸通りは国家戦略特区に指定されました。それにともない通りを舞台にした人々の活動をさらに強化していくつもりです」と、エリアマネジメント協会に参画する三菱地所 開発推進部 都市計画室の重松眞理子氏はいう。国家戦略特区とは、産業の国際競争力を強化するため政府が定めた区域のこと。また重松氏は「国家戦略特区に指定されたことはきっかけで、常に進化していくこのエリアの姿をみなさまにも体験していただきたいというのが本音です」と付け加えた。
こうした取り組みによって、休日に“丸の内エリア”を訪れる人は2002年以前に比べて約3倍以上に増えたという。東京を巡回する観光バスの拠点ともなり、インバウンドの訪問も激増している。平日はオフィス街、休日は観光地という2面性を併せ持つエリアへと成長した。街を活性化するソフト面の取り組みが功を奏したといえよう。
一連の取材を終え三菱地所を退出する際、印象に残ったのは、このエリアに最新のオフィスビルをいくつもかかえている同社が、大手町で最古ともいえる「大手町ビルヂング」に入居していること。最新オフィスはテナントに、という経営判断なのか、それともほかの理由があるのか……。いずれにせよ、築57年を迎えたこのビルも、将来は同社の再開発の対象になっているかもしれない。
大江戸膨張! 東京再開発の現場
●日本橋から新産業を! 熱気あふれるベンチャー支援の現場
●虎ノ門再開発にみる“創業地”に込めた森ビルの強い想い
●33年越しの悲願達成! 再開発完了にわく新生“ニコタマ”の姿
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】