再開発は街の新陳代謝に不可欠

では、「再開発が終わることはない」とは何を示しているのだろうか。三菱地所によると“街の新陳代謝”のためだという。

丸の内ビルディング。低層部は旧丸ビルの名残を残している

たとえば丸の内ビルディング(丸ビル)の場合、耐震性能の刷新による“街の新陳代謝”といえるだろう。大正年間(1923年)に竣工した旧丸の内ビルヂングは、1995年に建て替えされることが発表されたが、この年は阪神淡路大震災が発生した年。耐震性についての議論が国中で行われた時期だ。旧丸ビルは文化的価値が高かったため、保存をのぞむ日本建築学会の反対が起こるなど紆余曲折はあったが、建て替えは実施され2002年に竣工した。

2011年に東日本大震災が発生した際、同年代に建てられた九段会館(1934年)では屋根の崩落事故が起こり、不幸にも犠牲者が出てしまった。それまではレストランや結婚式場を営業していたが、震災以降、現在も休業中である。そのことを考えると、丸ビルの建て替え実施は、大きな意味があったのではないだろうか。

東日本大震災は、その後の丸の内エリアの再開発に大きな影響を与えた。その象徴が現在建設中の「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」(2016年4月竣工予定)だろう。このビルは温泉を掘削しながら建設され、2014年6月に温泉が湧いたということで話題になった。この温泉を中心にフィットネスクラブやプール、岩盤浴などを複合した施設を開設する予定だ。この施設は、通常は市民の憩いの場として営業される予定だが、震災時には災害復旧に携わる人たちに開放されるという。

大手町フィナンシャルシティ グランキューブ。同ビルに入居するフィットネス施設で温泉を利用する

一方、大手町の外郭、二の丸前のお堀に面した場所に建設されている「大手門タワー・JXビル」「大手町パークビル」からなる「大手町ホトリア」も大規模災害時を見越している。大手町パークビルにはキッチンなどを備えた“滞在型宿泊施設”が開業予定で、こちらのビルも大規模災害時は帰宅困難者を受け容れる予定だ。さらに大手門タワー・JXビルでは“堀端”という立地を生かし、大型貯留槽・高速浄化施設を導入予定。竣工後は、年間約500,000立方メートルのお堀の水を浄化するという。これは民間では初の取り組みになる。

帰宅困難者を見越した計画や浄水施設など、ビル1棟1棟に“機能”を持たせることで、街の新陳代謝を行っているのだ。

また、大丸有地区の再開発は、三菱地所だけでは成り立たないと強調する。まちづくり協議会に参加する各企業との協業・協調で、街づくりを進めていくという姿勢を崩さない。

竹橋側から大手町をのぞむ。計5本のタワークレーンが確認できるが、右の2本が三菱地所主導の大手町ホトリア、中央の2本が三井不動産主導の三井物産ビル、左の1本が大手町フィナンシャルシティ グランキューブだ。複数のデベロッパーが丸の内エリアの街をつくり上げている