年間30日の有給休暇をとるペルー。労働法が手厚すぎて正社員を増やすことが難しいと言われているが、解雇についてももちろん労働者に手厚い状況が用意されている。
給料は下がらず、70歳までクビにならない!?
意外に思われるかもしれないが、ペルーの企業は終身雇用が基本だ。試用期間は3か月。この期間の解雇は自由で、問題がなければ4か月目から本採用となる。懲戒解雇や自主退職がない限り、法定定年の70歳まで働き続けることができる。企業が安定成長を続けているならともかく、企業側にとって相当な負担であることは否めない。
加えて、ペルーでは社員の給料を下げることができない。賞与は本人の能力に関わらず年間2か月分の支給が義務付けられているし、有給休暇も確実に消化させる必要がある。また、20人以上の社員を抱える企業では、決算毎に税引前利益を従業員に配分する義務もある。配分率は業種ごとに決められており、製造業や漁業、電気通信業は10%、鉱業、商業、飲食業は8%、その他の業種は5%。「年収と同じくらいの配当金をもらったことがある」という人もいるから、羨ましさを通り越して開いた口がふさがらない。
もちろん、企業ごとに定年を設定することもできる。しかしその場合、解雇は会社都合扱いとなり、企業は勤続1年につき給与1.5カ月分、最大で12カ月分の解雇手当を退職金とは別に支払わなければならない。定年を法定より早くし、社員の平均年齢を若く保つことで社内の活力を高めている企業もあるが、この場合定年を迎えた社員全員が解雇手当の支給対象となってしまう。その分人件費が利益を圧迫するため、利益率の低い企業では対応が難しい。