――原案小説「ハイスピード!」には登場しない『Free!』オリジナルキャラクターの怜も、本作には登場します。小説の物語と絡む要素のないキャラクターを登場させるタイミングは難しかったのではないかと思うのですが、どうやって決めていったのでしょうか?

「Free!」のメインキャラクター・竜ヶ崎怜は、TVシリーズオリジナルキャラクターで、小説「ハイ☆スピード!」には登場しない。他の主要キャラと高校で出会った間柄のため、原案小説「ハイ☆スピード!」に絡んだエピソードはこれまでなかった。画像は、小説1巻(およびTVシリーズの回想シーン)で描かれた、遙や真琴、渚が大切にしている、凛と泳いだリレーの思い出の写真

まず、怜を登場させることは決めていました。『Free!』の主要キャラクターは全員出していこうというのは、制作当初から変わらない決定事項でした。ただ、出すにあたって、出し方というのは慎重に考慮しました。

何をもってしても、『Free!』として描かれた部分はいわば変えようのない“歴史”なので、そこを犯すことなく登場させよう、そしていずれかのキャラクターとの接点を作ろうと考えたところ、あのキャラクターとの接点以外に作りようがないかな、と。その部分の決め方は、消去法に近かったかもしれません。

――EDでも、怜とそのキャラクターが出会って、手を振るシーンが描かれていましたね。

EDに関して言えば、映画本編の中で拾いきれなかったもの、キャラクターの気持ちや物事の決着というところに少しでもいいからお届けしたいというのがありました。EDにはいろいろなカットを挿入したので、ぜひ最後まで目を離さずご覧いただけたら嬉しいです。

――『Free! -Eternl Summer-』(以下、『Free! ES』)の主要キャラであった山崎宗介も小説、TVアニメ双方に登場しますが、『映画 ハイ☆スピード!』では、やはり原作小説よりもアニメで受けた印象に近いと感じました。これはやはり“『Free! ES』の宗介”の前日談を強く意識した結果なのでしょうか?

山崎宗介は、本作ではオーストラリア留学中の『Free!』メインキャラクター・松岡凛の小学校以来の友人。凛の決意を思うあまり、遙に憤りをぶつける一幕も。

そうですね。先にお話した遙や真琴と同様、TVシリーズ『Free! ES』で見せた彼の性格などの印象がやはり強いだろう、という意識はあります。それ以外にも、宗介の存在と立ち回りがなければ、1本の映画の中で凛というキャラクターの存在を見せにくい、という理由もありました。

劇場では、『Free!』から見ていただいている方のほかに、『映画 ハイ☆スピード!』からはじめて鑑賞される方もいらっしゃいます。そういう方にとって凛の存在は、宗介という代弁者なしには感じづらいのではないか、と考えました。

かといって、凛は「宗介から遙に怒りをぶつけてほしい」と思ってはいないだろうと思うのですが、彼は凛の意思に触れて、それを遙に伝える役割を担っています。また、その上で、凛のことを大切に思っているキャラクターであってほしいとも思っています。