病気やケガでも安心して休める

ペルーでは、病気やケガで会社を休んだ場合、有給を使う必要がない。病欠は年間20日まで有給扱い、20日を超える場合は社会保険でカバーされる(年間180日まで。それ以上は社会保険庁医療委員会の評価次第)。日本ではまず自分の有給をあてるのが一般的だが、中には「有給取得は事前申請が原則」として、病欠を欠勤扱いにする企業もあるという。急病をどうやって事前に申請するのか甚だ疑問ではあるが、日本の労働法では決して違反とはみなされないのだ。

2015年10月10日に事故で手を怪我した人の傷病診断書。治療の内容に加え「7日間の休養を要する」と書かれている。7日も会社を休むとはどんな大怪我かと思ってしまうが、実際は左手親指のつけ根を3針縫っただけ。本人は痛がっていたものの、家族の目にも仕事に支障があるようには見えなかったという。病院も相当労働者寄りのようだ。

もちろんペルーでも、病気なら必ず認められるというわけではない。まずは会社に病気で休むと連絡し、すぐに病院で診断や治療を受けて傷病診断書を作成してもらう。診断書を偽造したり、知り合いの医師に頼んで適当な病名を書かせるような輩もいるので、企業側も気が抜けない。診断書が病院発行の正式なものかどうか、またその日付け、診断した医師の氏名や署名、医師免許番号などは念入りにチェックされる。

例えば、12月1日に風邪をひいて欠勤した社員が、翌2日に病院で治療を受けたとする。医者が「4日間の休養を要する」と診断すれば、12月2日から4日間の賃金は病欠扱いで保証されるが、診断日が12月2日なので、前日の12月1日は欠勤扱いとなってしまうことに注意。会社を休むほどの病気やケガなら、すぐに救急病院を訪れて当然(傷病発症当日の日付けが記載された診断書が手に入る)という理由だ。尚、有給休暇取得は最低7日間と決められているため、12月1日分の補てんに有給を充てることはできない。

現地企業の人事担当者が、こんな例を話してくれた。ある日、社員Aから病欠の連絡があった。実はこの社員A、直前に有給を申請していたが、繁忙期だったこともあり却下されていた。あまりにもタイミングが良すぎると疑問を感じた人事担当者は、Aの自宅に産業医を派遣。すると自宅では盛大なパーティーの真っ最中、本人もぴんぴんしていたそうだ。Aは日頃から問題もあり解雇されたが、本来この程度ならどんなに重い処罰でも停職処分止まりで、Aが労働雇用促進省に訴えれば、不当解雇として扱われるケースだという。ペルーでは、それほど正社員の解雇が難しい。