外国人でも問題ない! 東京大学エッジキャピタルからの投資を受けて起業

起業当時を振り返った程氏は「ちょうどリーマンショックの直前だったのもラッキーだった。もし数カ月遅れていたら、投資はかなり縮小されていたかもしれない」と語る。

アメリカでのプレゼンテーションで手応えを得た程氏は、特許取得や起業について積極的に調査。そこで、東大には学生の特許取得をサポートする制度や、学生ベンチャーへ出資を行う東京大学エッジキャピタルがあることも知ったという。

「当時、ここまで力を入れていたのは東大くらいでしたし、私はその制度をフルに使いました。東京大学エッジキャピタルからの投資は当時、卒業生などを主にしていて在学中の学生としては私が初の事例です。 最初に4000万円、その後500万円ずつ3回の増資を受けていますから、UTECから合計で5500万円ですね。これ以外の資金調達は行っていません」と程氏。

この投資を受けられたことを振り返り、程氏は「本当にラッキーだった」と語る。それは時期がよかったこと、身近にこうした制度が存在したことに対する感想という面が大きいだろう。しかしまた、日本という場で起業したことへの感想でもあるようだ。

「他のベンチャーキャピタルの場合、外国人である私が投資を受けることは難しかったかもしれません。しかし東京大学エッジキャピタルからしっかりと受けることができました。当初は500万円もあればよいと思っていたのですが、それでは足りないからもっと投資を受けるべきだという指摘ももらえました。実際にビジネスを始めてみても、日本というのは非常に平等な場だと感じます。大事なのはよい製品を持っているかどうかということで、外国人だからどうかというようなことを経験していません」と程氏は語った。

売却先をバイドゥにした理由と約束

創業当初、サービスはなかなか売上には結びつかなかったが、市場の要求に合わせた新たなサービス追加を積極的に行った結果、2011年には単月黒字化を達成。単年黒字化も2012年には達成することができた。

「でも、最初の1年半、まったく入金がないというのは非常に厳しいものでした。起業の時点では大きな苦労がなくラッキーなことが積み重なりましたが、なかなか売れない、人が足りない、というようなベンチャー企業が経験する苦労は一通りしていますよ」と程氏は苦笑する。

popInは2015年5月にバイドゥによって買収された。ベンチャーキャピタルは、数年後に大きく育ったビジネスを売却することで多大な利益を得ることを目的としている。その意味では「大きな利益を出すことができた」という。

しかしバイドゥというと、2013年に発覚した日本語変換ソフト「Baidu IME」および「Simeji」を通じての情報漏洩事件があった。なぜバイドゥを選択したのかということについて程氏は、丁寧に語ってくれた。

「まず、(ネットサービスに関わる)日本の大手企業のほとんどに打診し、それぞれかなりよい反応を得ていましたが、金額的に一番大きいのがバイドゥでした。またグローバル展開を狙いたい、より多くの人に使って欲しいという我々の狙いを実現するためによいパートナーだったという理由もあります。Simejiの件はかなりつっこんだ質問をし、十分な調査が行われていることを含めて納得のいく回答を得ることができました。その上で、我々の独立性を保つことを盛り込んだ契約を行いました」