――高校卒業後はメジャーデビューを目指してバンド活動をされていたそうですが、音楽の夢は抱いていらっしゃらないのでしょうか。

イベントでは華麗なカスタネットさばきを披露し、客席から驚きの声が上がる

音楽は今も続いています。だからカスタネット芸なんです。当時の僕は、きっとかっこつけたかったんですね。それでも、ステージ上では人を喜ばせたいという思いはあって、歳と共に「かっこつけたい」という欲求が無くなっていきました。ステージに立って人を喜ばせることができれば、やることはどんなことでもいいと思えるようになったんです。

――どういうきっかけでカスタネットになったんですか。

十代の頃に働いていたバーで覚えた技です。そこに音楽を加えて、ミュージック芸にしています。

――カスタネットが置いてあるバーも珍しいですね(笑)。

そこはタンバリンの隣にカスタネットが置いてありました(笑)。先輩がタンバリンをやって、その隣でカスタネットをたたいてたんですけど、もっと工夫できることがないか考えていた時にマスターが「こうやって叩いてみれば?」とヒントをくれて。それをもとに改良を重ねていきました。

――なるほど。今年は8月に新書『資産15億円男が調べまくった成功者たちの(秘)習慣 -THE Kノート-』を出版しましたね。番組がきっかけで偉人たちの習慣を調べるようになったそうですね。

そうですね。僕もこの本を作りながら、勉強させてもらいました。お金持ちの人の家には馬の置物が置いてあることが多かったり(笑)。調べていくといろいろと面白いことがわかるんですよ。

――前田さんの習慣は何ですか?

僕はなんだろう……「頼まれたことは必ず1回はやってみる」ですかね。人から頼られたらそれに応えてあげたいなと思います。もちろん失敗もありますが(笑)。

――幼い頃からですか?

昔からですね。小学生の頃、親が離婚していじめられたことがきっかけになっているような気がします。

――3人も兄弟がいたら、守ってくれそうな気がしますが、そうはならなかったんですね。

『資産15億円男が調べまくった成功者たちの(秘)習慣 -THE Kノート-』(コアマガジン)

兄貴は全然守ってくれませんでしたよ(笑)。はははははっ! 親が離婚して名前が変わったことを面白がられて、担任の先生から「怒っていいよ」と言われたので素直になって怒ってみたら、力でねじ伏せすぎてまた一人になってしまって(笑)。

その後、中学を卒業する時に、幼馴染の子に「音楽やろうよ」と誘われたのがバンド活動のきっかけです。それが人に頼られた最初の出来事でした。そこから生徒会長を頼まれたり、周りからお願いされることをやっていったら、みんながすごく喜んでくれるからそれが嬉しくて。

――ホームヘルパーの資格を持っていらっしゃるのもその流れですか。

高校卒業後、就職も進学もしませんでしたが、自分の親やおばあちゃんの面倒ぐらいは自分でみたいなと思って。でも、どうやったらいいんだろうと考えていた時に、近所にホームヘルパーの学校があったので、行ってみようと思ってそれがきっかけになりました。ベッドメイキングとか起こし方とか、いろいろな発見があって楽しかったです。

――"15億円相続"へと導いた方も、前田さんのそういうところを見ていたのかもしれませんね。

どうですかね。でも、好きなことしかやってこなかったら、見方によってはわがままですよ(笑)。お互い好きなことしかやってこなかったから、そういう波長が合ったのかもしれません。

――その方から言われたことで印象に残っていることはありますか。

隣のマンションの大家さんということは知っていたんですが、一緒に暮らしていた時に「今は私のお金なんだから、あんたには1円もあげないよ」としきりに言われていました(笑)。僕としてはそれでよかったので、週の半分は東京に戻ってバイトをしていました。

――そういえば、新書の最後はカーネルサンダースの習慣「稼いだお金を他人のために使う」で締めくくられていました。あえて最後にしたのは、何かしらの思いがあるような気がしたのですが。

今、僕がしていることです。バーの売り上げは、従業員を賄う分とほぼトントンぐらいにしています。お金を与えるのではなくて、そういう場所があればみんなもいろいろな活動をしやすくなりますから。小さい頃から、なぜか「僕が売れればみんなが幸せになる」と思っていたんです(笑)。それが売れる前に相続してしまって、どうしようかと考えた時に「他人のために使おう」と思ったんです。

"富"を得た男が見据えるものとは

――気になるのは「前田けゑ」という人物の今後、将来です。

こんな状況になってしまった以上、従業員や親を支えていくためにも「芸だけで稼いでやっていく」みたいなわがままは言えなくなりました。30歳で遺産を相続することはあまりありません。実際に相続される世代の方々とたくさんお話をして、苦労したことなどの体験談を伝えていきたいです。まだ若いのでフットワークも軽いですし、今日のイベントのようにたくさんの人に話していきたいです。

――やることが多すぎて忙しいですね(笑)。

いえ、大丈夫です(笑)。年を取ると「まあいいか」みたいな感じで、みんな動かなくなるんですよ。僕も明日死ぬ可能性だってあるわけです。だからこそ、一生懸命多くの人に伝えていきたいと思っています。

――人生って、ある日突然こんなに変わるものなんですね。

カスタネット芸も本当に大切なんですけど、相続の大変さを伝えることの方が自分の使命のようになっていて。

――10月からは『遺産相族』というドラマがはじまりましたし、相続に関して世間の関心も高まっていると思います(笑)。

あのドラマ、なんで僕を呼んでくれないんですかね(笑)! 遺産相続については、絶対に僕の方が詳しいです! 主人公は31歳で僕と年齢が近くて、10億円を相続するかどうかの話。なぜ呼んでくれないのでしょうか(笑)。

――確かに(笑)。ドラマにまで呼ばれるようになったら、前田けゑさんの肩書きがいよいよ分からなくなってきますね。

なんでしょうね。"東京23区の遺産相続人"とでもしておきますか(笑)!

■プロフィール
前田けゑ
1982年3月4日生まれ。大阪府出身。2005年、ワタナベエンターテインメントSWコースに一期生として入学。卒業後はソロやユニットでの音楽活動を経て、2008年に出演したNHKの番組でカスタネットパフォーマンスを披露し注目を集める。2009年に現在の事務所・オスカープロモーション バラエティー部にスカウトされ、以降はイベントMCやカスタネットパフォーマーとして活動している。また、2012年に名古屋市の地主で不動産などを管理していた養母が他界し、総資産15億円を相続。そのことがメディアでも取り上げられ、"総資産15億円相続の男"としても話題になっている。