だが、他社の戦略も強烈だ。国内冷凍食品最大手のニチレイフーズは「チャーハンの日」を申請登録したり、人気タレントを起用したCMを放映したりと、同社のチャーハン商品を強烈にアピール。味の素も、前述の北米投資は米食メインで、この発表に先駆けた6月には冷凍麺の北米での強化をアナウンスしている。各メーカーがじわじわと主食部門に力を入れている印象を受ける。

こうした中、テーブルマークが国内で採った戦略が“和”のテイストだ。同社は今年5月に期間限定商品「あさりと筍ごはん」をリリースし、武田氏によると「お客様に高評価をいただきました」という。

そしてこの秋に投入したのが「なると金時と鶏そぼろごはん」「牛しぐれ煮とまいたけごはん」の2製品だ。これらの商品に共通するのは日本食ならではの“混ぜごはん”であること。混ぜごはんで商品展開を強化している理由を武田氏はこう説明する。

この秋に投入された「なると金時と鶏そぼろごはん」と「牛しぐれ煮とまいたけごはん」

「米飯の冷凍食品というと、チャーハンやピラフというのが一般的。確かにこれらのジャンルが冷凍食品の米飯では2強で、シェアの大多数を占めます。ですが“和”は、これから確実に伸び率が高くなるジャンルだと予測しています」という。

一方で、昨今の“和食ブーム”に単に便乗したワケではないとした。「チャーハンやピラフではリーチできない層にアピールできると考えています。チャーハンやピラフは炊きあがった白米があれば1~2食分を調理することは簡単です。ですが、混ぜごはんとなると“混ぜごはんのもと”を用意して2~3合炊きしなくてはなりません。単身世帯や二人世帯にとって混ぜごはんを調理するのは、ハードルの高い作業となるのです。そうした世帯に弊社の混ぜごはんシリーズでアプローチできればと考えます」(武田氏)。

また、食材の選択にこだわっているという。「“和”のテイストを演出するには季節感が重要になってきます。5月に投入した製品は初夏の風物詩『アサリ』と『タケノコ』、そして今回投入したのが秋の味覚『鳴門金時』(徳島県産サツマイモ)と『マイタケ』を具材にしています」(武田氏)とのこと。

現在、ユーザーの評価は上々とのことだが、チャーハンやピラフに比べてニッチなメニューでどれだけ勝負できるか気になるところだ。

冷凍食品を取り巻く好材料

最後に、冷凍食品業界の今後について武田氏にうかがった。それによると、国内・国外ともに好材料が見え隠れする。

まず、国内についてだが、コンビニエンスストアにおける冷凍食品の地位がここ数年上がっているという。コンビニでは、おにぎりや巻きずし、お弁当など、競合する米飯が多いのがアキレス腱となるが、おにぎり・巻きずしよりもボリュームがあり、お弁当よりも安価という冷凍米飯のメリットがある。実際に冷凍食品の米飯をコンビニの電子レンジで温めてもらい、スプーンを袋に差し入れて食べる若年層がみられるという。コンビニでの冷凍米飯の認知が高まれば、おにぎりでは満足できず、かといってお弁当はお小遣いではきついという中高生のニーズを捉えられるかもしれない。

また、海外においては日本メーカーの高い冷凍技術がアドバンテージを持つだろうとする。円安による原材料の輸入コストの増加、冷凍食品を隅々までサプライできるコールドチェーンが整っていない国や地域があるといったマイナス面はあるものの、各地域のニーズを捉え、ローカライズに成功すれば、素材を生かし、できたての再現性に優れた日本の冷凍技術が評価されるだろう。今後の冷凍食品の行方を見守りたい。