それでは、今後どのようなメディア・技術が生まれてくるのだろうか。その問いに対して、池上氏は「わからない」と述べたうえで、自身の見解を示した。

変わりゆく時代を生きていくには

「開発者が陥りがちなのが、『今ある技術の中の延長線上に、どのような技術があるのか』ということを考えてしまうことだ。しかし、そういったことを考えていたのではうまくいかない。スティーブ・ジョブズのような、とんでもない発想をする、異質な存在が出てきて、初めて世の中が大きく変わるのではないか。これまでの既存の発想にはとらわれないような考え方、働き方を認めることで、可能性が生まれてくるのではないだろうか」(池上氏)

講演の最後には、サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏も登場。青野氏も、自社製品の使われ方の変化に驚いているという。

「これまで、会社の中の情報共有ソフトを作り続けてきたが、クラウドによって、情報共有のされ方が、会社内だけでなくなり、外からアクセスできることから働き方も変わってきた。会社を超えた変化が起きていることに驚いている」(青野氏)

加速度を増していく、テクノロジーの変化。どんどん変化していく時代に対して、池上氏は次のように語った。

「これからは、どれくらい柔軟に考えられるかが重要。最初から拒否するのではなく、一見ばかばかしい提案も、柔軟に受け入れるやわらかさが大切。このやわらかさはゆとりがあるからこそできること。ゆとりのある働き方によって、柔軟な発想ができる。ダーウィンの進化論もそう。突然変異した中で、環境が変化した時に、適応できるものが残ってきた。環境の変化に合わせて変化してきたわけではない。たまたま適応したものが残ってきた。将来は予測できからこそ、突然変異ができるような組織が、変化に対応していけるのではないか」(池上氏)

サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏(左)と池上氏(右)