――ほかに違いは生じますか?
割増賃金の面でも違いが生じます。休日割増賃金は、法定休日に労働した場合に支払われるもので、法定外休日に労働をしても支払われません。
週休1日の会社で、事前に振り替えることなく日曜日に出勤した場合は、法定休日の出勤となるため、1.35倍の割増賃金が支払われます。
しかし、週休2日の会社で法定外休日に出勤したとしても、割増賃金は支払われないのです。ただし、法定外休日に出勤したことで週の法定労働時間を超えた場合、超えた部分は時間外労働となるため、1.25倍の割増賃金が支払われます。
――振替休日に期限はありますか。同じ週に取れなかった場合、割増手当が必要と聞いたのですが
振替休日は、事前に休日を指定するものなので、そもそも期限という考え方はありません。厚生労働省の通達によって「振り替られた日以降できる限り近接している日が望ましい」とされています。
ただし、先に述べたように振替えにより週の法定労働時間を超えるのであれば、法定時間外の労働に対して1.25倍の割増賃金の支払いの必要があります。
――代休や振替休日を、半日単位や時間単位で振り替えることはできますか?
法定休日については、暦日主義というものがとられており、丸1日単位で与えられなければなりません。したがって、振替休日に関して、法定休日を半日単位や時間単位で振り替えることはできません。一方、法定外休日については、暦日主義がとられていないので、半日単位や時間単位で振り替えることは可能です。代休については、半日単位や時間単位でとることもできます。
週休1日の会社であれば、その休日は法定休日になるので、振替休日は丸1日単位の利用になります。時間単位の振り替えを行いたい場合には、代休を利用することになります。
週休2日の会社では法定外休日があるため、振替休日と代休、どちらでも半日単位や時間単位の振り替えができることになります。
――日曜日に出勤しなくてはならないのがわかっていたが、シフト決めの時わざと黙っていて、急きょ出勤して振替休日でなく代休扱いにしてもらった。代休の休日割増手当分を狙った場合、罪になるの?
この場合、結論としては罪にはならないと考えられます。
考えられる罪としては、詐欺罪があげられます。詐欺罪は、相手をだまして、その相手から財産を得るもので、だましたことと相手から財産が手渡されたこととの間に「因果関係」というものが必要となります。
しかし今回の場合、休日割増手当は支払われることになりますが、これは休日に出勤したことから支払われる正当な対価であり、シフト決めのときに黙っていたことから支払われるものではありません。一見、シフト決めのときに黙っていたことから代休扱いとなり、その結果休日出勤したとして休日割増手当が支払われていることから、因果関係があるとも考えられますが、法律上の「因果関係」はもっと直接的なものでなければならず、今回の場合、詐欺罪が成立するための因果関係まではないと判断される可能性が高いと思われます。
岩沙 好幸(いわさ よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。 パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。 動物好きでフクロウを飼育中。近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。