東京葛飾区の堀切の「和牛炭火焼肉 牛将」をはじめ、もつ焼きやインドカレーなど都内に全4店舗を展開する有限会社ラーナーの社長、橋本羅名(ハシモトラナ)さん。日本人の奥さんと4人のお子さんに囲まれ、幸せな日々を過ごしながら、祖国バングラデシュと日本の架け橋になるために仕事に情熱を注いでいます。

橋本羅名さん/バングラデシュ・シリシャ村出身/51歳/飲食店経営者

■これまでのキャリアの経緯を教えてください。

バングラデシュ南部にあるカウカリ郡のシルシャ村で、11人兄弟の上から3番目として生まれ育ちました。進学を機に首都ダッカに上京し、家庭教師をして学費を稼ぎながら、バングラデシュ国立ダッカ大学政治学部を卒業しました。その後、家族のためにお金を稼がなくてはいけないと思い、たまたま見かけた日本語学校の留学生として来日を決意。それが1988年です。

来日後、すぐに練りゴム製造会社で仕事を始めました。夜は居酒屋でバイトもして、親に仕送りをしていましたね。そのあとは焼肉店3軒に勤め、2000年には念願の自分の店をオープン。それがここ「和牛炭火焼肉 牛将」です。とはいえ当時は十分な資金もなかったので、事業計画書を作って駅前で保証人を探しました。助けてくれる人が見つかったのは本当に運がよかった。現在は飲食店4店舗の経営のほか、バングラデシュで検品会社を経営したり、企業のコンサルタント業務も手がけたりしています。

タレやドレッシングは橋本さんがつくる

■現在のお給料について教えてください。

起業前に比べれば、給料は上がりましたが、人間って上をみたらきりがないですよね。いい家や車がほしいとか、欲望もつきない。だからあえて、暮らしぶりは変えていないんです。贅沢をしなければ、そのぶんバングラデシュにいる姪や甥に仕送りができる。自分のちょっとした我慢が、もう一人の子どもの夢につながるかなと思って、そうしています。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

一番は、お客さんの笑顔を見られること。美味しいもの食べながら、家族や友だちと楽しく過ごす時間を提供できることが嬉しいんです。バングラデシュにいるときは家庭も裕福ではなかったので肉を食べる機会はほとんどなかったんですよ。それが日本に来て食べてみたら、いやーうまいなあって(笑)。しかも、米に合う。ちなみにバングラデシュも米食文化です。美味しいお肉をおなか一杯食べて、心の底から満足する。そういう幸せな時間や満足感を他の人に与える仕事ができたらいいなあと思ったのが、お店を始めたきっかけでした。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

食材の原価。もうね、毎年上がりっぱなし。当店ではオープン当初から厳正した和牛を備長炭で焼くというスタイルにこだわっているのですが、店を始めたときに比べて、価格が7倍近くなっている肉の部位もあります。本当に大変ですよ。いつかは、自分の養牛場や畑を持ち、食材からトータルで提供できたらいいですね。