アクシデント時の"判断"も

――今までの運航で、大変だったことはありましたか

2015年4月25日に起きたネパールでのマグニチュード7.8の大地震の時は、大変でした。というのも、JICA(独立行政法人 国際協力機構)から救援隊を現地に送りたいという要請があり、一刻も早くフライト させなければならなかったのです。当初はネパールのカトマンズ空港直行のチャーター便運航を考えていたのですが、その時点でカトマンズ空港は閉鎖されてしまっていました。なるべくリスクを減らすためにも、その空港の経験を持つ乗務員が担当する方が良いのですが、カトマンズ空港の着陸経験を持つ運航乗務員も出払ってしまっていました。幸い、カトマンズへの乗継空港として利用できるバンコク空港の経験者であれば、機材・乗員とも確保できるので、バンコクへの運航を打診し、了解を得て、運航を決定。このときは、夜中に一気に話を詰めて、早い段階で決定できたのが良かったですね。

実は上海の空港所長をしていた頃にも、四川の大地震の対応を経験しています。当時は逆にOCCから上海空港に連絡があり、地震の翌日には飛行機を飛ばす状態まで持って行きました。災害などのケースは、特に時間との勝負ということを痛感しましたね。

――緊急時の対応では、どのような対応が必要なのでしょうか

機材・乗員が確保できるのか、空港が対応できるのか、というところが大きな問題で、更に各地を飛び回るためには、各国の上空を飛行する認可が必要になります。

――日々の天候などの変化による運航の判断に関しても、要請がくるのでしょうか

もちろん小規模なことも多いですが、もし飛行機が欠航するとなった時は、会社の収入としても何千万~何億円と変わってくる世界ですので、判断には大きな責任が伴います。例えば、悪天候により運航が困難な場合、二時間遅らせることによって離陸可能になるのであれば、確認を取ります。もし、予見より天候の回復が早く、定刻で運航ができる場合があっても、安全を最優先させています。

――本当に大きな決定権限をお持ちなんですね

そうですね。だからこそ、会社としては、私が暇な方が良いのですが(笑)。なかなかそうはいかないので、日々判断し対応しています。

――最後に、今後の目標を教えてください 

私はあと4年ほどで定年を迎えます。その前に成し遂げたいのは、「お客様に選んでいただける企業」を後輩に引き継ぐことです。特に安全に対しては、絶対に引くことのない会社として引き継ぎたいと思っています。1985年に飛行機の墜落事故がありましたが、当時の状況を経験した人間は、もう社内でも1割も残っていません。残っている人間のひとりとして、厳しく部下に伝えていかなければならないと思っています。日々の業務のなかで、私が判断したことについては、メンバーにきちんと説明していこうと思いますし、判断基準のなかでは『安全』が最も大切だということを言い続けたいです。

――ありがとうございました