注目すべきはイノベーション
続けて御手洗氏は、イノベーションの観点から話を始めた。
「グローバリゼーションが進むなかで、経済の発展を支え、人々の生活を豊かにする原動力になるのがイノベーションである」と位置づける。「社会に大きなイノベーションをもたらすものが産業革命である。蒸気機関車による第一次産業革命、電気の活用による第二次産業革命、そして、ITの活用による第三次産業革命に続き、いまこそ、IoTによる第四次産業革命が訪れている」と語った。
IoTは、家電や自動車などのあらゆるものにセンサーが搭載され、モノが直接インターネットにつながり、モノとモノ、モノと人がデータをやりとりして、遠隔地から操作したり、人工知能が判断して自ら動くようになる社会を実現すると定義する。具体的な事例として、自動運転するクルマが会社まで送ってくれたり、部屋の照明や室温が最適な状況に調整されたり、風呂を自動で沸かすといった環境の実現を示しながら、「これはすでに身の回りに起こる現実となってきていることである。ベンチャー企業は、こうした魅力ある市場にこぞって参入し、新たなビジネスが次々と生まれている。すでに、IoTを巡る覇権争いが激しくなっている」と指摘した。
そして御手洗氏は、「このように進化が速く、方向性も多岐にわたっているのがIoTであるが、その分野において、キヤノンは絶好のポジションに位置している」と胸を張る。「なぜならば、IoTは『Internet of Things』であるとともに、『Imaging of Things』でもあるからだ」と理由を述べた。
「イメージングは、これまでも人と人を結ぶコミュニケーションツールであった。人は五感から情報を得ているが、そのうち、視覚からは全体の87%の情報を得ているといわれている。
IoTにおいても、視覚を通じたイメージングによる情報処理は不可欠な技術。IoT時代におけるイメージングとは、人と人を結ぶだけでなく、モノとモノ、システムとシステムの間のコミュニケーションを担うことになる。キヤノンは、イメージングデータの収集に必要となる、レンズ、センサー、プロセッサという3つの技術をすべて有しており、いずれもが世界最高水準の技術となっている。
スマート家電やスマートカーなどのスマート機器には、カメラやイメージセンサーが組み込まれ、画像や映像情報をもとに状況を認識するという使い方ができる。そして、情報の収集や入力だけでなく、イメージングを出力することも重要な要素である。ここでもキヤノンは、プリンタやディスプレイなどのデバイスを持っている。
今後は、あらゆるものがイメージングを通じて連携したり、ネットワーク化したりすることになる。キヤノンは、これらの先端技術や次世代技術を提供していく。特許出願件数が、10年連続で日本一であることからもその姿勢が裏付けられる。今後もこうしたイノベーションに取り組み、第四次産業革命の先頭に立ちたいと考えている」(御手洗氏)。