どのモバイルウォレット方式を採用するのか

では、Windows 10 Mobileではどのモバイルウォレット方式を採用するのか。おそらくは、Android Payに近い「HCE」方式を採用する可能性が高いとみられる。前述Orangeのように、携帯キャリアが自身の発行するSIMカードと組み合わせたウォレットサービスを引き続き提供する可能性は高く、仕組みとしてこれはそのまま残しておくだろう。

一方で、Windows 10 Mobileの標準方式としてはHCEベースのウォレットアプリを搭載し、同OSを搭載したスマートフォンを持つユーザーであれば、誰でもクレジットカード等を登録してNFCによる店舗決済やオンライン決済が行えるようになるだろう。ただし、Apple Payなどの前例にあるように、サービス提供が行われるかは地域によって異なり、米国や英国でサービスが提供される一方で、日本では提供までしばらく待たなければいけないという事態も十分に考えられる。

また、Windows Helloによるバイオメトリクス認証とNFC/HCEを組み合わせた決済サービスになる可能性も考えられる。ただし、現状でWindows Hello対応デバイスのLumia 950/950 XLに搭載されているのは虹彩認証(もしくは顔認証)の仕組みであり、指紋センサーを搭載したWindows PhoneまたはWindows Mobile端末はリリースされていない。虹彩認証(もしくは顔認証)の場合、認証が行われるタイミングで正面カメラに目またはカメラを合わせる必要があり、必ずしもユーザーの真正面にNFC対応カードリーダーが設置されているとは限らないリアルの店舗スペースにおいて、有効機能するかは疑問だ。その場合、NFCを使わない決済方式の検討や、虹彩認証(もしくは顔認証)ではないバイオメトリクス認証の採用、あるいは端末で認証後数秒以内にタップ&ペイを行うよう決済フローを工夫するといったことが考えられる。

Windows 10 Mobileでのタップ&ペイの設定例。写真内に「ロック画面でもタップ&ペイが有効」という項目が表示されている点に注目

このほか、Buildで公開された資料やデモを見る限り、Android Payよりも幾分か使いやすくなるよう工夫されているのもWindows 10 MobileにおけるHCEの特徴だ。Android Payでは決済にあたり、一度端末ロックを解除した後にウォレットアプリ(Andorid Payアプリ)を起動して決済を行う必要がある。つまり事前に下準備を行っておく必要がある。

一方でApple PayやSamsung Payはロックいかんにかかわらず、端末をかざすだけで決済が行えるようになっており(Touch IDに指を乗せておく必要がある)、その点でアドバンテージがある。これは日本のおサイフケータイも同じだ。Windows 10 Mobileではロック状態でもウォレットアプリを呼び出す仕組みが標準で用意されており、さらにWindows OSがNFC通信要求を読み取って適切なアプリ(この場合はウォレットアプリ)をフォアグラウンドに自動的に移動するようになっており、実質的にカードリーダーに端末をかざすだけで決済が可能だ。ただし、これでは端末をかざせば誰でも決済が行えてしまうため、Windows Helloのような仕組みを組み合わせる必要があるというわけだ。もしバイオメトリクスが利用できる認証センサーが端末に搭載されていない場合、Microsoft Passportに用意された「4桁PINコード」による認証を使う形になると考えられる。