わかりやすい指標とアプリ作りに1年半をかける

JINS MEMEを普及させる上でのもう一つの課題は「何に使うと便利なのか」を周知させることだ。体のデータを取れる、と言っても、そのままでは難しい。体の傾きがデータとしてわかっても、生活に活かせないからだ。

JINS MEME対応アプリのアイデアコンテストも実施していた。こちらは、岩野真理子氏の「病気予兆検知アプリ」

そこでJINSは開発初期から、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授に協力を依頼し、取得したデータから「心と体の状況」を客観的かつ簡単に把握するための指標づくりを行ってきた。

その指標が「カラダ年齢」「ココロ年齢」と名付けられた数値だ。体幹のブレや眼球の動きから、身体・精神の疲れを把握し、「年齢」として表示する。川島教授は「実際には、医学的には意味のない数字」と断った上で、「行動によってどう変わるかを把握し、行動の指針としてほしい」と話す。数値一つに一喜一憂するのではなく、行動によって数値が変わることを把握し、低い数値になるように行動することでより健康な状態を保つ、という考え方だ。この他にも、運転時の居眠り防止やランニングのフォーム確認と矯正など、わかりやすいアプリケーションを揃えている。

JINS MEMEは2014年5月に発表されたが、製品化には1年半の時間を必要とした。その理由は、こうしたアプリケーションの開発にある。実際にセンサーから取れるデータには、首の向きや動きに応じたノイズがつきもので、適切な処理をしないと、普通の人にわかりやすいデータにはならない。たくさんの被験者からデータを集め、そういう計測手法を確立してアプリを作りやすくすることが求められる。

JINS MEMEはハードを作っただけでは売れない。生かすための環境づくりこそが、JINSがコストと時間をかけたところであり、そこに本質がある。そのくらい、彼らは「メガネ市場の拡大」に本気だ、ということでもある。

こちらもアイデアコンテストから、野村壮太郎氏の「iSafe」

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