――制作スタッフでは、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)に参加した友永和秀さんが総監督を務めています。
うちにはもう何十年も『ルパン』を描いてきた人たちがいまだに現役です。友永は、『カリオストロの城』でクラリスを追いかけていく最初のシーンを描いていたり、昔でいえば『宇宙戦艦ヤマト』のヤマトや『宇宙海賊キャプテンハーロック』のアルカディア号がグアーっと飛んで行くシーンなどを手がけた人なんですよ。それこそ、目をつぶっていてもルパンが描ける、"ミスタールパン"みたいな人たちだからこそ、彼らに土台を作ってもらいました。彼らの描くルパン、彼らが動かすフィアットこそ、誰もが納得する『ルパン』なんですよ。
一方で若手にはデザイン・ファッション面を担当させましたが、中心がベテランだからこそ、若手の突拍子のない意見を咀嚼して『ルパン』にしてくれるという安心感がありました。僕自身で言えば、友永の『ルパン』を今のタイミングで出さないと、継承していけないぞという危機感もありました。テレコム内で継承するのと同じように、若い人たちにも『ルパン』を懐かしいアニメにしたくない。リアルタイムで楽しめる、今をまだ生きて、けん引しているアニメーションにしたかったんです。
――本作はイタリアでも放送されるとのことですが、イタリアでの人気のほどは?
向こうの30~50代の人たちが、みんな『ルパン』を見て育ってるんですよ。広いヨーロッパの中でも、イタリアが本当に突出しています。そこには、トムスが長きにわたり番組販売をしてきたという歴史があります。イタリアでは、小学校から帰ってきたら、14時に『ルパン』がヘビーローテーションで放送されているのだそうです。だから、それを見て育った人たちが立派な大人になり、それを今度は子どもに見せているんですよ。
――そうなると、イタリアのファン、昔からのファン、新規のファンと、ターゲットが絞りにくくなるのでは?
世代を超えても性別を超えても、誰もが「『ルパン』ってこれだよね」と思うものを作りたいというところで、今回のTVシリーズを作っています。シリーズでいうと第2作の赤いジャケットの『ルパン』を基軸にして作っています。全24話なのですが、毎回その話数完結の話になっていることに加え、24本通して一つのテーマもあるので、一本のドラマとしても続き物としても見ることができます。
――レベッカやニクスといった新キャラクターたちが、ルパンたちと深く関わる役どころで登場しています。
ルパンたちの中でドラマを作る時に、紅一点は不二子だけなので、ある意味限界値もあるし、かといってそれを壊すわけにはいかないというジレンマがあります。そこで新しいキャラクターを入れることで化学反応を楽しんで、かつそれによってルパンたちをさらに生かしたいなと。不二子よりもルパンに急接近してくる若いじゃじゃ馬がいた時、不二子は今までルパンをはぐらかしていたけれども、今度はどうやって振る舞うのかな、ちょっと悔しいとか思うのかなという期待感を込めています。銭形にはMI6の捜査官・ニクスを対峙させて、ルパンたちを追い詰めていく時に新参者が登場することでどう立ち振る舞うか、しかもお互いに組織に属してしがらみに苦しむという共通点を持つ組み合わせです。2人が登場することで、新たな関係性と、いい意味でのひずみができ、それがドラマを生み出すきっかけになっています。
――今回、企画を進めていく上で最後まで決まらなかったことは何でしょう?
「どうやって物語を終わらせるか」ということですね。新シリーズは24話を通した一つのテーマがあって、そこが毎回1回こっきりで何の脈絡もなかった『新ルパン』との大きな違いです。全体を太い線で貫いているドラマをどうやって終わらせるか。『ルパン』は終わらないものなのですが、物語としては終わらせなきゃいけない。そこをどう締めるかというところにすごく時間がかかりました。
――最後に、マスコミ向けの試写で公開されたイタリア版のエンディング映像(ルパン一味のパネルがテレコムのオフィスに登場し、室内を動き回る彼らの様子がパラパラ漫画のようなコマ送りでコミカルに描かれている)がすごくかっこいいと思ったのですが、国内で日の目を見る日は来るのでしょうか?
今のところ公開される予定はないんですよ。あれは、「テレコムがルパン一味にジャックされたら」という設定を遊びで作ったもの。どこかで使いたいなって僕的には思っているんですけどね(笑)。
■プロフィール
浄園祐(きよぞの ゆう)
1972年6月29日生まれ、静岡県出身。
テレコム・アニメーションフィルム代表取締役社長。
『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズでは制作進行を務めた(タツノコプロ)。1996年に東京ムービー(現トムス・エンタテインメント)入社後2005年まで『ルパン三世』TVスペシャルの制作に携わる。2007年ルパン三世OVA『GREEN VS RED』でプロデューサーデビュー。その後、TVアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』、OAD『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(2014年)でプロデューサーを務めた。
原作:モンキー・パンチ(C)TMS