――本作は、エピソード4~6がベースになっているということですが、第一作『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)は40年近く前の作品なのに古さを感じさせない魅力があります。
3・4歳のころ、父がエピソード4を見に映画館に連れて行ってくれたのが私と『スター・ウォーズ』との出会いです。この作品の魅力は、さまざまなレベルでいろんなことが言えると思うのですが、突き詰めていくとストーリーがシンプルでわかりやすいことにあるのではないかと考えています。
物語は、「善」と「悪」との戦いを中心に、主人公・ルークが「善」の側で成長していく過程が描かれます。黒と白がはっきりした価値観を反映した映画であることが、文化の違いを超えて世界中で愛されている要因なのではないかと思います。それだけではなく、手に汗握るバトルシーンやアクションなど、すべてが詰まったすばらしいエンターテインメント作品です。文化を問わないという点でさらに掘り下げると、例えばルーク・スカイウォーカーは、いろんな角度から多くのキャラクターを取り込んで作られた主人公です。日本の黒澤(明)監督の映画の影響も代表的なものの一つですが、そういった多彩な材料からキャラクターを構成しているので、さまざまな文化に属する人が見た時にそれぞれ違う響き方ができ、それが結果として世界中どこでも愛される作品になりえているのではないではないかと思います。
――スタッフのみなさんも『スター・ウォーズ』のファンが多いとお伺いしました。
大きなテーマを担うという責任感に、恐怖を覚える面もありましたし、その反面で好きなものにかける情熱とが両方ある状況でした。結果としてここまでやってきたということは、恐怖感より情熱のほうが勝っていたということだと思うのですが、今でもふと我に返ると恐ろしくなることはあります。プロダクトデザインにおいて、題材となる作品にこれだけ愛情を持って取り組める仕事はなかなかありません。
だからこそ、"正しく""きちんと"題材にふさわしいものを作りたいという思いがスタッフ間でも強く、強烈な使命感をもって作品に臨むことができました。思い入れが強すぎて、新しいコンテンツや販促用の動画をリリースする時などでも、ミーティングでみんな熱くなってしまうことも珍しくありませんでした。
――個人的に思い入れのあるキャラクターは?
やはりダース・ベイダーですね。ダース・ベイダーになりきれるという時点で楽しいのですが、巨大な力で造作もなく相手を倒せる万能感というのが気持ち良かったりして。ゲームの中にも仕込んだのですが、相手の首をつかんで窒息させる「フォース・チョーク」という技がお気に入りで、そのまま倒してもいいですし、そこからライトセイバーで切り倒したり、投げたりもできますので、成功するとすごく気持ちがいい。
ゲームの"やりこみ"というところでいくと、ボバ・フェットもオススメです。というのも、映画以上に彼の潜在力・能力を引き出しながら戦えるようになっているからです。ボバ・フェットって、映画では出てきてすぐにサーラックに食べられてしまう役どころなんですよね。ゲームでは、そんな彼の秘めた可能性を追求していただけるのではないかと思っています。装備もおもしろくて、ジェットパックを背負っているのでマップ上を飛び回ることもできますし、武器も多彩で火炎放射器、ミサイル、ブラスターなどいろいろ組み合わせて戦うことができます。ジェットパックで空を飛びながら正確に射撃をするのは難しいのですが、操作に習熟してそれがうまくなると、かなりの達成感が味わえます。
――キーンさんのヒーローデザイナーという肩書は、日本ではすごく珍しいと思います。それだけ作品のキャラクターが、デザインを必要とするだけの深みがあるということですね。
『スター・ウォーズ』の世界に登場するキャラクターをゲームの中に取り込んで、それを現実的なものにして、プレイできるように仕上げていくのが私の仕事です。夢のような仕事ですが、その期待とプレッシャーを考えると好きなことは仕事にするべきではないですね(笑)。
『スター・ウォーズ バトルフロント』は、2015年11月19日発売。価格は「デラックス版」が8,800円(税別)、「スタンダード版」が7,800円(税別)となる。
■プロフィール
ジェイミー・キーン
DICEシニアプロデューサー、『スター・ウォーズ バトルフロント』ヒーローデザイナー統括。
自身も『スター・ウォーズ』の大ファンとして知られ、身の回りの物全てを『スター・ウォーズ』に囲まれて生活する彼を、妻は辛抱強く支えているという。初めて映画館で見た映画は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)。
(C)2015 Electronic Arts