Apple A9のパフォーマンスは?

基調講演での発表時に使われたスライドに「Optimized for real-world use」と書かれていたように、AppleがSoC/CPUに求めるパフォーマンスはあくまで実体験向上が目的であり、いたずらに数値を追うものではない。だから、ベンチマークを測定することにあまり意味はないが、スペックの変更を確認する意味でベンチマークアプリを実行した結果をお伝えしておこう。

新しい「Apple A9」のCPUコアの動作周波数は1.85GHz。メモリ容量は2GB、L2キャッシュは3MBにそれぞれ増量されており、iPhone 6(1.4GHz/1GB/1MB)に比べパワーアップされている。基調講演のスライドによれば、CPUは最大70%高速化されてデスクトップPC並に、GPUは最大90%高速化されてゲームコンソール並になったという話だ。

iPhone 6sのシステム情報。CPUのクロック数とメモリ容量、L2キャッシュ容量の変化を読み取ることができる

演算性能を測るベンチマークアプリ「Geekbench 3」を実行したところ、iPhone 6はシングルコアが1621、マルチコアが2892。iPhone 6sはシングルコアが2544、マルチコアが4424という結果となった。いずれも70%とはいかないまでも、53~55%強のパフォーマンスアップを確認できた。

CPUベンチマークアプリ「Geekbench 3」を使い、iPhone 6s(左)とiPhone 6(右)のパフォーマンスを測定した結果

GPUの検証には「3D MARK」を利用した(テストは「Ice Storm Unlimited」)。結果はiPhone 6の17122に対しiPhone 6sが28105と、約64%アップ。こちらも90%には及ばないスコアながらも、大幅なパフォーマンス向上を確認できた。

GPUベンチマークアプリ「3D MARK」を使い、iPhone 6s(左)とiPhone 6(右)のパフォーマンスを測定した結果

このように、iPhone 6sの基礎体力はiPhone 6に比べ着実に強化されているが、よほど要求スペックの高いアプリでもないかぎりパフォーマンス差を意識する場面は少ない。SafariにしてもTwitterやFacebookにしても、iPhone 6でじゅうぶんブラウジングやスクロールは快適だ。その意味で、3D TouchやLive Photosなど新機能に心惹かれないかぎり、あと1年iPhone 6を使い続けるという選択肢も悪くない。

しかし、明らかにパフォーマンス差を感じる場面が……それはiOS 9で導入された「低電力モード」。iPhone 6の場合、低電力モードに切り替えると追従性の低下は否めないが、iPhone 6sではあまり気にならない。「Geekbench 3」でiPhone 6sの低電力モードを測定したところ、シングルコアが1477でマルチコアが2482と、通常モードのiPhone 6を若干下回る程度であり、納得した次第だ。デバイスの構造上バッテリー容量が限られるだけに、速度はiPhone 6並だがバッテリーのもちは4割アップ、という低電力モードの活用は大いに「あり」といえるだろう。

iPhone 6sは低電力モードに切り替えても、それほど"もっさり感"なく使用できる