コンパクトだがサウンドは?

では、P650KとP650-Eのサウンドはどうなのだろうか。周波数特性グラフを見ると、150Hz以下の低域はあまり期待できないが、高域は20kHz近くまで伸びている。

P650KとP650-Eを組み合わせた際の周波数特性

フォステクスからはパーソナルアンプ「AP-5」や「AP15D」、そしてUSB DACを内蔵した「PC200USB」など、かんすぴと組み合わせやすいアンプがリリースされているが、今回はクリエイティブメディアの「SoundBlaster X7」を使用した。X7はUSBやBluetoothなど、さまざまな再生方法を選ぶことができるハイレゾ対応のアンプだ。

この組み合わせで実際に聞いてみると、ボーカルなどを中心とした楽曲での表現力はなかなか侮れない。また、65mmという小口径のフルレンジスピーカーを使用しているため、その持ち味である音像定位のよさが際立っている。

「SoundBlaster X7」との組み合わせ。実際には左右のスピーカーの間隔を約40cmにして聞いている

X7の特徴の一つが、専用アプリ「SBX Pro Studio」による音質のカスタマイズ。これを利用して、P650KとP650-Eの低域を補ってみるとどうだろうか。X7のイコライザーは設定範囲が±12dBなので、低いほうを持ち上げれば、100Hzぐらいまではフラットに近づけることができる。また、中高域のレベルを下げて同時に低域のレベルをあげると、50Hzぐらいまではフラットにできそうだ。

イコライザーで、フラットな状態(左)から、低域を増強(中)。さらに中高域のレベルを下げてなるべくフラットに(右)

さて、実際にやってみると、確かに低域はボリュームアップする。2番目の写真のように低域を持ち上げるだけならば、それほどサウンドのバランスは崩れない。しかし、3番目のように極端な調整をすると、音が全体的にこもってしまう。また、P650KとP650-Eが本来持っている、きっちりとした音像の定位がスポイルされてしまっているように聞こえる。さらに、イコライザの調整範囲外となっている極低域がカットされた感じも不自然だ。

やはり、このシステムで低域のボリュームをアップするには、小型のサブウーファーを組み合わせたほうが期待できるだろう。フォステクスのPM-SUBminiやヤマハのYST-SW010といったコンパクトなサブウーファーを加えてシステムアップを図るのがよいのではないだろうか。

ニアフィールドリスニングの入門用にも

イヤホンやヘッドホンでも音楽は楽しめるが、やはりスピーカーでもよい音を楽しみたいという人は多い。だが、日本の住宅環境では大音量でスピーカーを鳴らすと近所迷惑にもなりかねない、そこで広まってきているのがニアフィールドリスニング。デスクトップ上に設置したコンパクトなシステムで、至近距離で音楽を楽しむというスタイルだ。

家庭内でスピーカーを設置した場合のリスニング位置は、2~3mほどというのが一般的だろう。それに対して、ニアフィールドリスニングでの聴取位置は数10cm程度だ。音のエネルギーは距離の2乗で弱まるため、リビングなどに設置するステレオシステムに比べて、アンプの出力ははるかに小さくてすむ。また、出力が小さいため、部屋全体の音響特性をあまり考慮する必要がないという手軽さも持ち合わせている。

ニアフィールドリスニングに必要なものは、ポータブルプレーヤーやスマートフォン、PCなどの音楽再生が可能な機器、そしてアンプとスピーカーだ。アンプは大きい出力は必要ない。それよりも重要なのが、デスクトップに設置するためのコンパクトさと、デジタル機器と接続するためのUSBやネットワークインタフェースの装備だ。スピーカーも大型のものは向かず、コンパクトなフルレンジスピーカーが使いやすい。そういった用途のエントリーモデルとしても、P650KとP650-Eは手軽なの組み合わせといえるだろう。

さて、次回は、完成したP650KとP650-Eにちょっとしたカスタマイズを加えてみたい。