ほぼ日手帳は半完成品?

――デザイナーの方のアイデアも積極的に活用していくということでしょうか?

なるべくダメって言いたくないんですよね。「私はこういう使い方してるけど、いいですか?」と言う人もいるんだけど、僕はダメって言いません。だから、楽しい。例えば忙しくて楽しくてしょうがない時に、手帳に何も書かない人がいても、何もおかしくないと思います。僕らは半完成を売っているわけだから。完成させるのはその人。何も書いていない手帳でも、その人の1年ですよ。

――なるほど

2016年のテーマを『This is my LIFE.』という言葉でくくったら、僕らも気楽になれたし、使ってくれる人も勇気づけてくれると思うんですよね。やらなきゃいけないことって、他にもいっぱいあるでしょう?(笑)

――「半完成」が"ほぼ"という言葉にも入っているのでしょうか?

そうですね。"ほぼ"という言葉に近い何かですよね。やわらかさというか、軽さというか。でも書いた事が重いっていう人がいてもいい。例えば、2011年に、東日本大震災で「ほぼ日手帳」を破損や紛失された方を対象に、手帳本体やカバーを無償提供しました。当時の、「ほぼ日手帳」を欲しいと思ってくれた人の気持ちは軽くないですよね。アルバムを失くしたのと同じように考えてくれている。一人ずつの想いを大切にしなきゃということを、あの年は痛切に感じました。もう文房具じゃないんですよね。自分の想いをそこに入れているみたいな。

ユーザーにとっての"ちょっと好き"でありたい

――ユーザーさんの声を聞いて次の年に活かしていくことは、積極的にやっているのでしょうか

スペックを変えるというよりもどう喜ばれているか知ることが、色々なヒントになりますね。例えば、吉田カバンさんと組んだ時は、手帳を山奥に持っていく人を想像しました。それは、山に持っていった時の喜びを考えているときは、ネイルアートをする人が街で使うのとは全然違いますよね。

――そうですね。

色々な人間がいるということが、手帳の愛され方を増やしてくれる。ネイルアートをする人の手帳も、山に行った人のおかげでもっと豊かになる。こんな商品はなかなかないですよね。ぼくはほぼ日手帳ワールドの管理人ですから。楽しいですよ。良い物つくっちゃったなあと思います(笑)。

――最後に、ほぼ日手帳の未来についてお伺いできれば・・・!

"ちょっと好き"っていう人が、増えてくれたらいいなと思います。ちょっと好きなものって相当好きでしょう? 『あの人、私をちょっと好きなのよね』っていうのはすごく好きでしょう(笑)。好きでたまらないものとは、別物で。だから、"ちょっと好き"というくらいの付き合いでいいと思うんです。充分愛されているので。その人達と一緒に次のワールドをつくっていきたいです。

――ありがとうございました

まとめ

過去にマイナビニュース編集部で、糸井重里氏に単独インタビューを行った際、ほぼ日手帳について『まぜこぜなんです。今まであった「仕事」ってお皿と[私(わたくし)]ってお皿を、「1日」ってお皿に変えたんです』と話されていた。この話からもあるように、手帳をあえて文房具として縛らず、使う人に自由を与える"半完成"という点が、ほぼ日手帳が沢山の人に親しまれてきた理由なのかもしれない。