今までは埋め立てられた浅草橋方面を紹介してきたが、北運河にはまた違った味わいがある。なにより、昔の趣を今の伝える北運河はひなびた雰囲気さえもなんだかいとおしい。
変わらない風景の中に重要文化財も
散策路エリアから北運河エリアに向かうと、竜宮橋のたもとにある鉄筋コンクリートの古い建造物が目に入ってくる。こちらは大正12年(1923)に完成した北海製罐小樽工場第3倉庫で、小樽のコンクリート建築の中でも初期のものにあたる。独特のデザインと古びた雰囲気で、かつては特撮テレビドラマ「仮面ライダー」のショッカーの基地として、近年ではアートプロジェクトで使用されるなど、市民はもとより多くの人たちに愛されている。
北運河は観光客が少ないが、係留された釣り舟や観光船で運河上はにぎわいがある。最近は旧観光船がボートカフェとしてオープンするなど新たな動きも出てきた。北運河のはずれには、かつて活躍した艀がひとつだけ係留されているのでぜひ見てほしい。
歴史的建造物が多い小樽の中でも、特に旧日本郵船小樽支店は見ごたえがあるスポット。明治39年(1906)完成し、国の重要文化財に指定されている。外観は重厚だが内部の装飾は繊細、豪華な調度品にも歴史を感じる。そして、この建物の前にはかつて船着き場や倉庫があったのだが、現在は運河公園として市民や観光客の憩いの場となっている。
運河の見えるカフェやレストランで小休止
北運河を眺めながらお茶や食事をするなら、「プレスカフェ」や「小樽ゴールドストーンカフェ」へ。特に小樽ゴールドストーンカフェは、バーとして夜に利用するのもオススメだ。
2階の席から運河がよく見えるのは「ル・キャトリエム運河通り店」。小樽でも人気のスイーツの店でありながら、食事がとても充実している。この日いただいた「ランチ Bコース」(アミューズ、前菜、メイン、パン、コーヒーまたは紅茶付きで税込1,300円)は、ボリューム、味、美しさに感激! 素材、味、見た目にもできる限りこだわるというオーナーシェフ漆谷寿昭さんの意気込みが感じられる。
小樽運河をボートで巡る
また、オシャレな木製のボートで運河を巡る「小樽運河クルーズ」の人気も高い。キャプテンがボートを操船しながら小樽の歴史や運河沿いの建造物や名所などを説明してくれる40分の船の旅だ。歩いた時とは違って見える風景も新鮮で、特に薄暮の時はロマンチック。
海の街・小樽を実感でき、実寸大の運河を体感できる運河クルーズは、あくせくしがちな観光をゆったり豊かなものにしてくれる。日没までのデイクルーズは大人税込1,500円、ナイトクルーズは税込1,800円で楽しめる。
短い時間を過ごすだけではもったいない小樽運河の観光。おいしいものを食べたり、歴史に触れたり、季節によっても時間帯によっても、新しい顔を見せてくれる小樽運河をゆっくりのんびり楽しんでみては?
※記事中の価格・情報は2015年7月取材時のもの