――『るろうに剣心』の取材でも、難病である潰瘍性大腸炎との闘いだったお話をうかがいましたが、身内であるユウさんの「目の焦点も合わないまま、ベッドに倒れこんでいた」という言葉からも壮絶な日々だったことがよく分かりました。その不屈の精神はどこで培われたんだろうとブログを読んでいたら……小学校2年生からはじめたバレーボールが相当スパルタだったと書いてありました。関係ありそうですか。
とってもスパルタでした。詳しく話すと今の時代だったら問題になりそうなくらい(笑)。最初にはじめたきっかけは同じクラスの友だちに「遊びに来てみたら?」と誘われて、遊びに行っているうちに気づいたら入団していました。特にバレーボールに興味があったわけでもなく、「学校終わりに遊びに行く場所」という感覚で。スパルタの実態を知ったのは、入団した後のことです(笑)。
――それでも中学3年生まで続けたそうですね。
バレーボールの楽しさに気づくことができたからです。あとは習慣になっていたので、「辞めたら悔しい」という思いが強かったんだと思います。でも、「辞めたい」と思ったことは何十回もあって(笑)。小学校4年生の時、辞めると決めて、練習に行かずに家にいたら、監督が家まで来たことがありました。両親も含めて話し合うことになって、いつも厳しい監督が優しく「メアがおらんと試合にならへん」「体育館で待ってるし良かったら来てや」と説得してくださいました。ズルいですよね(笑)。
その後、両親にも説得されたので「分かった…続けてみるわ…」みたいな感じで渋々でしたけど(笑)、続けることにしました。当時長かった髪をバッサリ切ってショートヘアにして体育館に行ったら、いつもは厳しい監督が笑顔で待っていてくれました。「髪切ったんか!」と大喜び(笑)。その日は練習試合だったので相手チームもいたんですが、監督は私の頭を触りながら「見てみい! このベッピン!」って(笑)。すぐに試合に出してくれて、アタックを決めた時に「そうやメア! お前がおらな、試合にならへんわ!」と言ってくれた時は本当に感動して、続けていこうと決意しました。
その後もまた厳しいトレーニングが待っているわけですが、監督のそういう一面を知ることができましたし、自分がいることで喜んでくれるのであればがんばって続けていこうと思いました。先ほど「不屈の精神」とありましたが、監督から学んだのは「あきらめないこと」と「続けることの大切さ」です。
――ブログにも書いてありましたが「『疲れた』と言わない父」も精神的な影響に関係ありそうですね。
本当に一度も「疲れた」と聞いたことないんです。すごいですよね。経済的に厳しい時もありましたが、子どもたちには絶対に弱い部分を見せない人でした。バレーボールの監督もそうですけど、父からの影響も大きいと思います。私は人前で弱音を吐きたくないですし、涙も見せたくないのでやっぱり似ているんでしょうね。悩みごとも人にあまり相談せずに、解決してから話すことが多いみたいです。最近友だちにも言われました。
――すごくその言葉に納得してしまいました。「第3回ベストエンゲージメント2015」の表彰式で、ユウさんの手紙に涙を流してしまった時に「お涙頂戴系とか絶対にやらないと決めていた」とおっしゃっていました。
そうです(笑)。妹が手紙を読むわけですから、状況的に見ても泣きそうなシチュエーションですよね。わざと泣いてると思われるのも嫌ですし……。だから、涙があふれないように必死で耐えてたんですよ! でも、妹の思いが伝わったからこそ出た涙なので、しょうがないなと思います(笑)。
■妹・ユウが姉・メアリージュンに送った手紙
お姉ちゃんへ
お姉ちゃん、いつも一番近くで時に厳しく、時に優しく接してくれてありがとう。私にとっての一番のライバルであり、そして親友でいてくれてありがとう。
今だからこう言えるけど、実は少し前までは素直にこう思えなかった自分がいました。テレビや人に紹介されるたびに「高橋メアリージュンの妹」と言われることが嫌だった時期もありました。「ああ、またや…また比べられた」「こんなに比べられるんだったら、もうお姉ちゃんから離れたい」と思ったりもしていました。
そんな時にお姉ちゃんが「潰瘍性大腸炎」と診断された。ご飯も食べられないほどの症状と映画の撮影というハードスケジュールが重なって、お姉ちゃんの体調はどんどん悪化して、見る見る痩せていったよな? 撮影から家に帰ってきても目の焦点も合わないまま、ベッドに倒れこんでいたお姉ちゃん。そしてまた数時間後には這うように起きて、撮影に向かっていたね。
そんなお姉ちゃんを見て、私はものすごく自分のことを責めました。お姉ちゃんと比べられたくなくて、お姉ちゃんから離れたいと考えていた自分がすごく小さくて、情けなくて。ごめんなさい。お姉ちゃんから離れたいなんて嘘です。「比べられても何をされてもいいから、お姉ちゃんと離れ離れにしんといてください」って何度も何度も神様に祈っていました。そして、心の底から変わりたいと思っていました。
それでもお姉ちゃんは一切弱音を吐かなかったよね。本当はものすごくつらかったと思う。あの時もっと頼ってもらえるように、もっともっと声を掛ければよかった。それでもお姉ちゃんは強い心で回復していきました。今では一緒においしいご飯を、大好きなお肉を食べられる。「お腹いっぱい!」とか「おいしかった!」とか満足気に言うお姉ちゃんの顔を見るのが実はめちゃくちゃうれしいです。
今は胸を張って、「私が高橋メアリージュンの妹です」と言えるよ? もちろん、自立もしなあかんけど、それでもお姉ちゃんは私にとって心から尊敬する女性、女優であり、たった一人の自慢のお姉ちゃんです。
これからも末永く、お互いがいつかお嫁さんになってもずっと親友でいてください。いつもありがとう。愛しています。
ユウより
■プロフィール
高橋メアリージュン
1987年11月8日生まれ。滋賀県出身。2004年からファッション誌『CanCam』(小学館)の専属モデルとして活躍。2012年に同誌を卒業し、同年のNHK連続テレビ小説『純と愛』の狩野マリヤ役に抜てきされ、女優デビュー。昨年から今年にかけて『闇金ウシジマくん Part2』、『るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編』、『キカイダー REBOOT』、『リアル鬼ごっこ』、『ヒロイン失格』(2015年9月14日公開)などの映画に出演。今年1月期のフジテレビ系ドラマ『残念な夫。』にレギュラー出演した。