夏休みムード満点の8月上旬、米国では少し面白い噂が流れた。Appleが仮想移動体通信事業者、いわゆるMNVOになる準備をしている、とBusiness Insiderが伝えた。しかし、Appleは翌日にこの噂を否定している。
MVNOは、現在日本では「格安SIM」などとして盛り上がっている市場だ。大手携帯電話会社が用意するプランとは異なる、価格やデータ通信容量を取り揃え、別の選択肢を提供する役割を果たしている。日本において、その多くはNTTドコモの回線を活用しており、2015年第1四半期の契約者純増数が、前年同期の2倍に当たる93.7万契約という数字に表れるほど、MVNOの認知度が高まってきている。
AppleがMVNOを行うとしたら、日本でもドコモの回線などを使うことになるだろう。また米国の場合、3位、4位のキャリアであるT-MobileとSprintの回線に頼ることになるはずだ。回線をキャリアに頼るとはいえ、端末販売から回線調達までをAppleがすべて手がけることになり、iPhoneをビジネスの中心に据えてきた大手携帯電話会社にとっては、思わぬ競合が登場することになる。
Googleが手がけるMVNO「Fi」
スマートフォンのプラットホームを手がける企業がMVNOを仕掛ける事例は、Appleの噂が初めてではない。既にGoogleが「Project Fi」と呼ばれるMVNOサービスを小規模にスタートさせている。
このサービスは、Nexus 6を対応端末として、常にその場所で最適な通信速度が得られる仕組みを提供している。場所に応じて、より速いWi-Fi、より速い4Gネットワークを選択し、快適なネット環境を提供する取り組みだ。
データプランもユニークだ。基本料金の月額20ドルには、米国内の音声通話とSMSが無制限で含まれる。これに、1GBあたり10ドルのデータ通信利用料を毎月先払いすることになるが、その月に使わなかったデータ場合は、100MBあたり1ドルが返金される仕組みだ。例えば毎月3GBのデータを契約した場合、月額の支払いは50ドルだが、1.3GBしかデータを使わなかった場合、17ドルが返金される。
MVNOの接続先としてはT-MobileとSprintを活用しており、米国内ではWi-Fiとも比較してその速度が速いほうのネットワークを利用する。
ちなみに海外でも256kbpsが上限の3Gネットワーク接続となるが、追加料金なしでデータが利用できる。このことから、T-Mobileのネットワークを主として利用していると推測できる。