Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は、市場には多数のハードウェア開発用モジュールが流通しているが、これら開発用モジュールはプロトタイプのみに特化しており、量産フェーズでは継続利用できない課題があると、「BlueNinja」の開発背景を紹介した。

右手にBlueNinjaを手にする、Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏

岩佐氏は、「電子機器業界と、最近のハードウェア・スタートアップ企業の間に壁があると感じる」と語る。既存のハードウェア業界では、プロトタイプ製品と量産製品は完全に別物で、プロトタイプ製品では高価な専用部品を使う一方、量産製品ではコストを下げ低価格化への圧力があるという。

一方、スタートアップ企業では、使えるリソースが少ないため量産は決定事項ではない。仮に量産するとなれば、「プロトタイプ製品をなるべく使いたい、価格は若干高めでも良い」という希望がある。

既存モジュールとプロトタイピングキットの課題

リソースに余裕がある既存のハードウェア業界が作るプロトタイピングキットは高価で、例えばIoT製品でプロトタイプを作ろうとすると、プロトタイピングキットで数千円、通信モジュールで数百~数千円、プリント基板やセンサーで数千円と、1万円をゆうに超える上、サイズも名刺入れ程度まで大きくなってしまう。

そこで今回、個人やスタートアップ企業が簡単に使える、低価格の小型IoT向けモジュールを制作するに至ったという。

東芝製SoCは手頃な価格で「全部入り」

今回、「BlueNinja」に採用されたメインSoCは、東芝の「TZ1001MBG」。東芝では「ApP Lite」シリーズとして、家電や産業機器、デジタルサイネージ用途など、数種類のSoCを展開しているが、この中でも小型かつ低消費電力の製品となる。

小型パッケージである点、非常に低消費電力である点、Bluetooth 4.0を搭載している点、加速度センサーを内蔵している点、24bit ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)により外部センサー情報を高精度に処理できる点といった特徴が岩佐氏のニーズと合致し、岩佐氏から東芝側に話を持ちかけ製品化に至った。「IoTに必要な機能が、全てワンパッケージに搭載されている。しかも、価格が高くない。24bit ADCの搭載など、マニアックで面白い製品」(岩佐氏)。

東芝 セミコンダクター&ストレージ社 ロジックLSI事業部 事業部長附の松井俊也氏は、「DMM.make AKIBAは、モノ作りしていた子供の頃を思い出すワクワクする場所。東芝のLSIもこの活動の中に使ってもらい、一緒になって盛り上げていきたい」と話した。

東芝 セミコンダクター&ストレージ社 ロジックLSI事業部 事業部長附の松井俊也氏

「BlueNinja」という名称の由来は、「Blue」はBluetooth 4.0を搭載したモジュールから。「Ninja」は、ハードウェア・スタートアップを陰から支えること、小型機器に内蔵できる小ささ・薄さ・軽さであること、日本製であり忍者のように迅速なハードウェア開発を実現することという、3重の意味を込めたとのこと。8月1日・2日に東京ビッグサイトで開催される「Maker Faire Tokyo 2015」でも展示される。

「BlueNinja」は東京・秋葉原の「DMM.make AKIBA」内の設備で製造される。製造には、基板にパーツを載せるはんだ印刷機、パーツを載せるプリント基板実機、そして約250度まで基板を熱しはんだを溶解・接着させる小型リフロー炉を使用する。中段中央の写真は、パーツが装着された基板にシールドが実装されたもの。左下の写真がリフロー炉となる