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20代から「隠居生活」を始めた都内在住の大原扁理(へんり)さん。彼は今、最低限の稼ぎでのんびりと暮らすという"究極のライフワークバランス"を実現している。同氏が語る隠居のメリットとデメリットとは…?
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隠居してよかったこと
私が隠居生活に突入したのは20代の頃です。かれこれ5年ほど、都内で悠々自適に暮らしております。隠居してよかったことを幾つかご紹介します。
1. 満員電車に毎日乗らなくていい
これは隠居してすぐにわかった変化です。週に2回しか働いていないし、出かける用事もない。最近では仕事の日も、自転車で職場まで行くことが多いです。5月など風を切って走るのは快適だし、運動にもなります。
通勤ラッシュの電車で気持ちのいい人なんてそんなにいないですよね。乗らなくていいなら乗らないに越したことはありません。
2. どうでもいい人が勝手に離れていく
私は隠居ですので、基本的にあんまり連絡がつきません。プライベートでは携帯も持たないし、フェイスブックなどのSMSもめんどくさいのでやりません。あと、常日頃からまわりに「隠居してるんで」とふれまわり、プチ世捨て人っぽい雰囲気を伝えておくのも大切です。
するとどうなるかというと、本当に私と会いたい人以外から連絡が来ることがなくなります。断るのには大変なエネルギーがいりますから、べつに私じゃなくてもいい用事でいちいち連絡がこなくなると、精神衛生上もとてもいいものです。
3. 困っている友人を助けられる
助けるといっても、何も300万円貸すとか保証人になるとかいう、どろどろした話ではありません。毎日働いていたらできないようなほんのちょっとした助けが、たくさんできるのです。
例えば最近では、友人が家を留守にするというので、4日ほど猫の世話に来てくれと頼まれ、2秒でOKしました。こんな都会で猫と暮らせるなんて、一生はイヤだけど4日間体験できるなら願ったりかなったりです。
また、友人でなくても、駅の階段とかで代わりに荷物を運んであげることもよくあります。私は肉体的にはどちらかというと貧相なので、重い荷物を持つと腕がちぎれそうになりますが、特に遅れる仕事も用事もないですしね…。
このように、隠居すると、いつも片手がてきとうにあいているような感じです。ふとしたときに何かちょっとしたことを人のためにすると気分がいい。ですが私はただの隠居であり、聖人になりたいわけではないので、やりたくないときはやらないこともあります。
隠居してみて悪かったこと
続いて、隠居してわかったデメリットをご紹介します。
1. ひまである
隠居が朝起きると、目の前に茫洋と広がる大海原のように時間が横たわっている。やるべきことなどないし、誰からの指示もありません。永遠に終わらない休日のようなものです。
私にとってはこの時間をどう楽しんでやろうか、クリエイティビティが刺激される天国のような環境ですが、何か仕事を与えられる方が楽な人にはつらいかもしれません。
2. 保証がない
例えば病気になったとき、生活費をどうするのか。仕事はどうするのか。老後は…、正直、わかりません。なったときはなったとき、という割り切りが大事です。これも、心配性の人はできないかもしれません。
3. ぜいたくができない
お金を使って享受するタイプの楽しみ事が制限されます。海外旅行、飲み会、家や車を持つ、毎週ジムやエステに通うなどの楽しみはあきらめなければなりません。私はというと、質素な生活が身についているし、自分が幸せならそれでいいと思っています。