使うほどに成長する音楽サービス

米国のApple Musicの楽曲数は3,000万曲以上。検索したら聴きたいアーティストやアルバムが引き出せ、人力レコメンデーションから様々な曲との出会いを体験できる。Apple Musicは「音楽ストリーミングサービス」と書き表されていることが多いが、個人的には「クラウド型の音楽サービス」と表現したい。あらゆる音楽がクラウドに存在し、いつでもどこからでも、様々なデバイスを使ってアクセスできる。その体験に自信があるからこそ、Appleは3カ月もの長い無料体験期間を用意したのだと思う。3,000万曲を超える米国でのサービスと、日本でのサービスでは印象が異なるが、日本においても米国と同じ体験の実現を目指していると期待したい。

難点を挙げると、機能を盛り込みすぎてミュージック・アプリやiTunesのユーザーインターフェイスが分かりにくくなってしまっていること。初めて音楽ストリーミングサービスを使う人は、従来の音楽プレーヤーとは違う活用方法に戸惑うと思う。Siriに「これに似た曲をもっとかけて」と頼めるなんてちょっと思いつかないだろうし、Apple Musicライブラリから聴きたい曲をブラウズする方法を見つけるだけでもしばらくかかりそうだ。FacebookがモバイルでMessengerを独立させたように、昨今モバイルでは機能やサービスのアンバンドルが進んでいる。そうした傾向に逆行した設計が、使いづらさにつながっているように思う。

従来のミュージック・アプリやiTunesの機能にApple Musicを統合したUIは混雑していて、全ての機能を使いこなせるようになるまで時間がかかる。ただ、クラウドとローカルの楽曲管理を意識させないところなど、Apple謹製サービスのメリットを感じるところも多々ある

いきなり分かりにくくてギブアップする人も出てくるかもしれないが、試用をスタートさせた方は気に入った曲にハートを付けるような小さなことでも、しばらくは積極的に使用することをオススメする。使うほどにパーソナライズが進みFor Youが変化する。「こんな曲にハートを付けたら、おすすめが変な風になるのでは……」なんて気にする必要はない。どんどん使って、ちょくちょくFor YouとNewをチェックしてみよう。使えば使うほどApple Musicは成長し、印象が変わっていくはずだ。

楽曲数は多いほどApple Musicの魅力は増すが、Pandoraだって数十万曲でスタートしながら的確なレコメンデーション機能が口コミで広まって利用希望者が殺到した。日本のApple Musicが実力を発揮するのはまだ先のことになりそうだが、現状でもレコメンデーションは機能する。聴きたい曲が見つからずにフラストレーションを感じる人もいるかもしれないが、そうした中でも発見があり、繰り返し楽しめる曲と出会えているなら将来に期待してみるべきだと思う。