米美知子氏が語るEOS 5Ds Rの使用感

最後に登壇したのは、スペシャルゲストとして呼ばれた風景写真家の米美知子氏。EOS 5Ds Rを持って現場でどう撮ったのか、どう優れているのかを使用感を含めて語ってくれた。

「ブレは大丈夫でしたか?」

EOS 5Ds Rを使って、キャノンの担当者や雑誌編集者に真っ先に聞かれたのはブレについて。普段からジッツォの3型の三脚にハスキーの雲台をのせて、シャッターはミラーアップしてレリーズを使うといったスタイルだったので、そのあたりはほとんど気にならなかったそうだ。

風景写真家である米美知子氏。EOS学園の講師を務めるかたわら、北海道から西表島まで日本の森を撮り歩く

「普段から三脚を使って、レリーズを使って、風がやむのをまって、足場を気にして撮っている人であれば大丈夫」とのことで、しっかりと固定されていれば過度な心配は必要ないと言えるようだ。米氏自身も今までの撮影スタイルを変えることなく、EOS 5D Mark IIIで撮影していた時と同様に扱えたとのこと。

新機能である「レリーズタイミング設定」も試し、「1秒後に撮影」を多くの場面で用いたそうだ。2秒だと風が吹いているときに現状が変わってしまうので、あえて1秒の設定にしたとの話で、この機能があることで、ブレに関してはより軽減できているのではないかと述べた。

作品を前にして解像感についても語ってくれた。米氏はパンフォーカス表現が好きなので、絞りをF16に設定して撮ることが多いそうだ。

実際に5Ds Rで撮影してみると、その解像度に驚きを隠せなかったという。従来のカメラでも手前のピントを合わせた部分は十分高解像でキレイなのだが、背景の木とか、奥行き感が克明に描写され、後ろがあいまいにならない、絞ったら絞り込んだだけのパンフォーカス表現ができるようになって、自分の中ではいたく感動したと語った。

岐阜でピンクの桜と白い桜を撮影したもの。こちらはEOS 5Dsのカタログにも掲載されている

ただ、解像度が高い分、データが重くなってしまうのはいたしかたないところ。PCで現像する際、何かアクションを起こすと待たされることが多いとも。米氏のPC環境はそれほどハイスペックではないので、時間がかかる際はほかの部屋に行ってみたり、髪の毛を直したり、化粧したりと、イライラしないように時間を有効活用したそうだ。それらをふまえて、現像に使うPC環境をきちんと整えてあげないとストレスを感じてしまうであろうとのことだ。

絞ることで避けられない回折については、それほど怖がらずに撮影してもらいたいとのこと。やはり、F16とF11とF8とでは背景が違ってくるので、その背景に関しては自分がどう表現したいのか、どこまでディテールを見せたいのか、色だけにするのか、といったように表現を選べるよう、自身も怖がらずに絞り込んでいるそうだ。

BS朝日のドキュメンタリー番組「The Photographers 2」のロケ先でお風呂に入っていたら、キレイな夕焼けが始まったので飛び出して撮影したという作品。夕焼けに照らされた雲と残雪の質感がとてもよく出たそうだ

また、キヤノンのRAW現像ソフト「DPP (Digital Photo Professional)」のデジタルレンズオプティマイザ機能を使うことで、光学的な各種の収差や回折を補正してくれるので、皆さんもぜひ使ってくださいとのことだ。ただし、こちらの機能もPCへの負荷が大きいので、ここぞというときに使っているそうだ。 感度に関して、実際の撮影では基本的にISO400、もしくはISO200を使い、風が吹いているときはISO800にしていたそうだ。また、暗いからといって感度を上げるのではなく、三脚でしっかりと固定して、じっくりと光量をかせぐことでスローシャッターな表現もできるし、解像感のあるよい写真も撮れるので、丁寧な撮影を心がけてほしいと語った。

青森県・奥入瀬渓流の三乱(さみだれ)の流れを撮影した作品。ちょうどヤマツツジが咲くころにかれこれ20年ほど訪れているそうだが、今年は一斉に花開いたそうで貴重なカット。そんなときにEOS 5Ds Rを持って撮影できたのはラッキーだったとのこと

最後に、米氏の感想ではボディデザインはEOS 5D Mark IIIとそれほど変わらないが、中身はまったくの別物でモンスターなカメラ。このカメラのよさを最大限表現するためにも、「印刷所の人にも頑張ってもらいたいと思うのと同時に、丸投げではなく、自分自身も色校正をしっかりとして、データを渡すときにも色見本をつけて、最後誌面でよさを伝えられれば」と語っていたのが印象的だった。