必死で作った多機能時計、大量の在庫になることも…
増田氏「回路や技術が進化して、小型化されたり省電力化されたりすると、とりあえず時計に載せてみるわけです。それから、じゃあそれを何に使おうか、と考える(笑)。当時はそんな商品開発をしていましたね」
「キミはUFOを撃ち落とせるか!」のナレーションが穏やかでない「カシオゲームデジタル」のCF。そういえば、ゲーム電卓なんてのもありましたね |
表面のガラスに指で数字を書いて計算できる時計。まるで現在のタッチパネル。使用スタイルは、現代のスマートウオッチにかなり近い! |
マーケティングではなく、技術優先の商品開発。とはいえ、発想のオリジナリティと技術の確かさは折り紙付き。それゆえ、意外なところでヒットを生むこともあった。
増田氏「電話帳にトーン発信機能を付けた『フォーンダイヤラー』という製品がありました。腕時計を電話機の話口に近付けてボタンを押すと、ピポパポ……と電話がかかるんですが、あるとき、とある国でこれを使うと電話代がタダになってしまうことがわかり、その国から大量のオーダーが入ったんです。ところが、製品出荷前に、その国の電話局がその仕組みを止めたんですね。で、在庫になってしまった(笑)」
一方、赤外線機能を搭載し、テレビやビデオのリモコン代わりになる腕時計はかなり売れたそうだ。
増田氏「BMWのある車種が赤外線を使ったキーレスエントリーを使っていて、その商品が使えたんです。時計で鍵が開くのがカッコいいと、結構売れましたね」
ほかにも、サーモグラフィーに使われる放射温度計を搭載した時計が、天ぷら油の温度測定に良いとされていたことや(カシオはカッコよく売ろうとしてF1のタイヤ温度を測定したプロモーションをしていたらしいが)、MP3プレーヤーを搭載した時計でイヤホンのコードが腕に絡まってしまって困ったことなど、楽しくも懐かしいエピソードが披露された。
また、当時の貴重なCF映像も上映。「カシオトロン、左腕のコンピュータ」、「男の腕に電話帳。カシオテレメモ50」、「カシオゲームデジタル。キミはUFOを撃ち落とせるか!」など、これまた懐かしい映像とキャッチフレーズに涙腺がゆるむ。ちなみに、展示期間中は、これらCF映像も設置されたタブレットで流されているとのことなので、お見逃しなく。