"送り出し側"で音は大きく変わる

Fidelio M2BTはワイヤードのヘッドホンとしても利用できるが、その真骨頂はワイヤレス。ここまで記事を読み進めていただいた向きも、Bluetooth接続で聴いたときの音が気になっているに違いない。Bluetooth/A2DPで必須のコーデック(SBC)に加え、より高圧縮/高効率なAAC、それをも上回るaptXで聴けるとすればなおさらだ。

試聴には、aptXに対応するプレーヤーとしてXperia Z Ultra SOL24、AACに対応するプレーヤーとしてApple Watchを用意した。Apple Watchはプレイリストを同期すると自律的な再生が可能となり、SBC/AAC対応というiPhone/iPadとスペック的には同水準のプレーヤーになることはあまり知られていないため、敢えて起用したというわけだ。スタイリッシュな新製品同士の組み合わせは、Bluetoothオーディオの再生環境として先端を行くと言っていいだろう。

まずは、ワイヤードヘッドホンとしての実力を検証。低域を若干強調しつつも全体の傾向はフラットで、音の輪郭もしっかり。スネアドラムのアタックから収束までもすばやく、ハイハットの音もヌケがいい。ベースの量感は多めで、ロックやハウス系の曲にドライブ感を添える。

付属のケーブルを装着すれば、Fidelio F1と同等のワイヤードヘッドホンとして利用できる

ワイヤードヘッドホンとしての音を基準に、Apple WatchとペアリングしてBluetooth(コーデックはAAC)で聴いてみると、だいぶ印象が変わる。Apple Watch側の問題と思われる再生開始直後の音飛びはともかく、音の情報量が減り全体的に"痩せて"しまうようだ。タイトな印象だったベースの音も、打って変わってモタつき気味に。同じくコーデックにAACを使うiPhoneが同傾向だったことも、ひと言添えておきたい。ただし、腕に巻いておくだけのApple Watchは機動力抜群、移動時の使用ではまた別な魅力を放つに違いない。

Apple WatchやiOSデバイスとのペアリングは、手動で行う必要がある

送り出し側をaptX対応のXperia Z Ultra SOL24に変えると、再び印象は一変する。輪郭の鮮明さや音場感、ボーカルの定位はワイヤードのときに近く、低域のレスポンスもスピーディー。Apple Watch(AAC)のときは明らかに痩せてしまった音が、だいぶ元の水準に戻ったよう。ポップスを気軽に楽しむときはともかく、音の微妙なニュアンスを感じたいときはaptX対応のスマートフォン/オーディオプレイヤーがお勧めだ。

M2BTはNFCをサポートしているので、NFC対応Android端末は軽くタッチするだけでペアリングが完了する

aptX対応のXperiaシリーズでペアリングすると、このようなメッセージが現れる

質感高くワイヤレス再生時の音も高水準なFidelio M2BTだが、一つ念押ししておきたい。頭の形が縦長のヨーロッパ人向けにデザインされているのか、少々側圧が高めだ。外耳を押す構造のオンイヤータイプということもあり、どの程度連続使用するのかを頭に入れつつ、店頭で試してみるとよいだろう。

なお、この5月よりオンキヨー&パイオニアイノベーションズがフィリップスのオーディオ製品の国内代理店をつとめている。