• 理由1:開発途上国での人気が高いから

考えられる理由のひとつが、開発途上国では比較的最近まで販売されていたことだ。iPhoneはスマートフォンの中でもプレミアムブランドであり、アップルは理由もなくブランド価値を下げるような廉価販売を嫌う傾向にある(そのためiPhone 5cが想像より高く、あまり売れなかったということもあったが)。

しかし一方で、潜在的ユーザー数が圧倒的に多く、成長市場として無視できない開発途上国にも端末を投入する必要がある。そこでアップルが取ってきたのが、1~2年型落ちの機種を、フラッシュメモリの容量も減らした上でこれらの市場に投入するという手法だ。

たとえば新興市場であるインドは12億人以上の人口を持ち、将来世界2位となると言われている巨大市場だが、未だにiPhone 4sが人気機種として販売されている。最新のiPhoneには手が出ないが、それでもiPhoneが欲しいという層に人気があるそうだ。アップル自体のインドでのシェアは5%前後にすぎないが、それでも年間200万台程度は販売が見込める。将来インド市場が現在の中国市場のように成長したときを考えて、種をまいておくのに越したことはないというわけだ。

いくら型落ちで安いとはいえ、月収の数割を費やしてやっとiPhoneを購入した人たちに、「君たちがこの間買ったiPhoneだけど、もう最新のOSは動かないからね」と言うわけにはいかないだろう(もっとも、実は2014年前半に、iPhone 4で同じことをやったようなのだが……)。

  • 理由2:ほかの機種もA5を使っているから

Apple A5を搭載している機種は、iPhone 4のほか、iPad 2、iPad mini、それに第3世代のApple TVがある(ただしApple TVのA5はシングルコアになっている)。Apple TVのOSはiOSベースで、バージョンから類推するとiPhoneのそれよりも1世代低いようなのだが、CPUがA5であることには違いがない。

iPad 2とiPad miniはいずれもApple A5を搭載する。違いは大きさとコネクター程度だ

A5を搭載した機種はいずれも、比較的長く売り続けられた端末だ。iPad 2は2011年4月に発売されて2014年3月まで、iPad miniは2012年11月に発売され、今なお販売が続いている。iPad 2とiPad miniは教育市場などでも多く使われており、これを早々とカットするのは戦略的に見ても得策ではないだろう。

また、Apple TVは発売以降3年以上が経過しており、今年中にも新型の登場が噂されているものの、値下げしたばかりでこれからユーザーを増やそうというところ。iOS 9でもイチオシのHomekitでも、家の外からiCloudを経由して家電を制御する際に、Apple TVがハブとして機能することを発表したばかりだ。

Apple TVはA5ながらコア数が1つに減らされており、その分小さく安価に作れると見られる

つまり、戦略上もこれらの機種を無下にカットするわけにはいかないので、結果的にiPhone 4sも延命されたというわけだ。