ユーザの「関心」を予測すると

iOS 9のデモでもっとも気になった新機能は、ユーザの行動を先読みする「Proactive Assistant」だ。iOSデバイスの使用状況やメールなどのデータを分析した結果をもとに、ユーザが次にとるであろうアクションを見越した処理を行うことがその主眼。日課のランニングの前にイヤホンを挿すと音楽再生が準備される、といった処理が自動的に行われるのだそうだ。

決まった場所/時間でアプリを利用していると、iPhoneがユーザの行動を先読みしてくれるように

この新機能がどのような仕組みかは具体的に説明されなかったが、デモの最後に個人情報の扱いに関する説明があったことからしても、ユーザの行動がログとして逐一記録され、そのログを分析することで時間や位置を特定、次の行動の予想を可能にしているのだろう。

受信したメールに予定に関する情報がある場合、自動的に「カレンダー」のイベントを作成する機能も紹介された。開発経緯は特にコメントされていないが、こちらはAppleが2013年に買収した「Cue」のパーソナルデータ分析技術が生かされている可能性がある。

データは匿名で記録されApple IDと関連付けられることはないとのことだが、これまで以上にiOSデバイスが"プライバシーの宝庫"になることは間違いない。

ただし、基調講演の情報だけで判断すると、判断材料となるデータはiOSデバイスが直接取得したものが中心だ(だからApple IDとのリンクが不要なのだろう)。Googleが持つクラウド上の膨大なデータをタイムリーに反映できる「Google Now」と比較すると、機能的なインパクトという意味ではパンチに欠けるが、そのぶん"監視されている感"は少ない。この手の機能に対し、なにか気味が悪い、といった情緒的な反応を示してしまう向きには、Proactive Assistantのほうが受け入れられやすいかもしれない。

Apple IDが必要ないことは、クラウド上のデータをタイムリーに使用しないことの裏返し?