さらに手塚は、『半沢直樹』で共演した堺雅人とのエピソードを話してくれた。2人の出会いは、堺の初出演舞台。それが手塚の主演舞台だったこともあり、堺は自著で「手塚さんの演技に圧倒されました。尊敬する先輩です」と語っているのだが、真相はどうなのか?
「(笑いながら)尊敬はしていないんじゃないですか?! 当時“堺くん”はまだ大学生で、僕の役はマクベスでした。横浜の不良という設定のマクベスなんですけど、僕はこういう人間なので、セリフ忘れたときにバタフライナイフを使って、手とかをちょっと切って血を出して、お客さんを驚かせたんですよ。顔面に血を塗りながら『セリフ何だっけかな』と思い出していたのですが、多分そういうのが面白いなと思ってくれたんじゃないですか」
何とも血なまぐさい驚きのエピソード! 大学生の“堺くん”にはさぞ衝撃的な光景だったのではないか。ただやはり『半沢直樹』で再会した“堺さん”は別人だったという。
「それから別の舞台(『ヴァンプ・ショウ』)でご一緒しましたが、『半沢』のときはもう全然違っていて、スゴイ役者の“堺さん”に変わっていました。彼のスゴイところは全くブレなくて、"以上"も"以下"もやらないこと。みんな"以上"のことをやってしまうんですけど、彼は必ず“ちょうど”をキープしていて、人から何をどんなに言われても揺るがないんですよ。『半沢』を作るとずっとキープしていたし、『リーガルハイ』もずっとキープしていたし、上げたり下げたりを全くしない、という意味では稀有な役者さんだと思います」
ところで、52歳にして手塚は、一度も結婚歴のない独身。それにプライベートの姿が全く見えてこない。「まさか独身主義者では?」と思い、尋ねてみると……
「独身主義者ではないですけど……どうなんですかね。『結婚というものに向いているのかな?』『僕って大変だろうな』と思うんですよ。とりあえず芝居のこと以外考えていないし、他のことは何もできないんですよ。本当に芝居しかやってきていないので、社会的なことが一切ダメだし、頓着がないんですよね。だから、今までつき合ってきた女の子たちはだいたい離れていきました。でも、僕から離れたことはありません。『できたらいいな』とは思いますけど」
そう言って自虐的に笑う手塚。ただ実際に会ってみると(失礼ながら)想像以上の男前で、身長175㎝51kgのスリム体形。公式ホームページの写真を見ても実は二枚目であることがわかるし、演劇ファンやネット上では「実はイケメン」「女性ファンが増えている」という声もある。その事実を手塚に伝えてみると、いつになく爆笑して話しはじめた。
「アッ、ハハハ。僕は男前ではないですからね。それは妄想ですから、目を覚ましてください。みなさん目を覚ましてください、と書いておいてください(笑)」
次のドラマでは、ぜひバリバリに決めたイケメンの役が見たい。この人なら難なく演じてしまうのではないか……そんな期待感がある。テレビ東京に限らず各局のドラマ班には、手塚とおるの魅力をさらに引き出して欲しいと思う。