個性ある企業が多いものづくり業界の中で一際、異彩を放つ企業がある。創業以来、ネットを介して機械設計者には3D CADデータを無償で提供し続け、部品サプライヤにはスポンサードされ続けている。それだけなら良くできたプラットフォームビジネスというだけだが、国内に競合らしき競合はなし。なぜ、そのような存在が成り立つのか。

機械設計者と部品サプライヤが出会う場所、「PARTcommunity」

サービスの名前は「PARTcommunity」。設計者のためのポータルサイト「WEB2CAD」内のコーナーとして展開されている。運営するのはドイツに本社があり、18年の歴史の中で、ものづくり企業と部品サプライヤ企業の橋渡しを行ってきたキャデナス・ウェブ・ツー・キャド株式会社(以下、CADENAS)だ。「PARTcommunity」のサービス内容を簡単に紹介すると、3D CADデータを通じて、機械設計者と部品サプライヤの「出会い」を創出する。本サービスから機械設計者は3D CADデータを無償取得でき、部品サプライヤは部品の認知向上、販売を行える。

「WEB2CAD」 の目玉コンテンツである「PARTcommunity」。設計者はここから3D CADデータをダウンロードする

いわずもがなだが、自動車や飛行機、家電品、工業ロボットなど、さまざまな機械は多くの部品で構成されている。しかし、そのすべてがメーカーで新規に設計・作成されるわけではない。新規で設計を行った場合、その後の製造から品質のテストまでの工程で膨大な時間とコストが発生してしまうためだ。したがって効率化やコスト削減のため、モーターやスイッチなどを含め、既製品が流用されることが多い。

また、ものづくりの現場では3D CADの活用がスタンダードになってきている。導入部品の選定を行う際も3D CADデータが配布されている部品が優先的に採用されることも少なくない現状だ。かくして図面の作成に追われる機械設計者は、日々少しでも工数を減らすため、メーカー部品に関しては3D CADデータを探し求めることになる。メーカーからすれば部品を使ってもらってナンボ、極力これに応じようとする。この両者の希望をかなえる場が、「PARTcommunity」というわけだ。