――初めて組まれた島唯一の医者・しげる役の風間俊介さんは。
風間はアドリブを付けたすとかではなく、最初からマックスのテンションでやってきて、あとは差し引いてくださいって感じでした。いま抑え目の演技が流行っている感じがありますけど、そういうのが全くないんですよ。本読みからイキナリ全速力。リハも本番もずっと。思っていたイメージと違いました。
――というと。
彼が演じた医者があんな風になるとは思っていなかったんですよ。僕は力の抜けた脱力感のあるダメ医者を思い描いてたんです。それが本読みの時点でかなりハイテンションだったので、あ、じゃあ、そっちのほうに行こうかということで、付け足した部分も結構あります。だからいい意味でイメージと違いました。正直、殺人鬼とか暗い役とか多かったですしね(笑)。普段もすごく明るいし、気を使う。別によしもとの後輩でもないのに、お酒がなくなったら、「品川さんお酒どうですか、大丈夫ですか?」とか、移動するときに、「携帯とか全部持ちました?」とか、直の後輩のような気の使い方をしてくれる子です(笑)。
――シシド・カフカさんはいかがでしたか。
カフカちゃんは、男らしいっていうか、男ですね(笑)。一緒に飲んでいてトイレに行くときに、ちょっと酔っぱらっていたのかよろけて、壁にドン!ってやったときがあったんですよ。壁ドンですね(笑)。僕にやったわけじゃなくて、誰もいない壁にだけど。で、とにかくそれがあまりにもかっこよかった。だから映画の中でも使っています。彼女の見せ場があるんですけど、そのときに、あれやってよ、飲んでるときにドンってやって俺が笑ってたやつって言ってやってもらったんです。かっこよかったですね。
――今回で4作目になりますが、長編の前に短編も撮られています。映画監督になりたいという気持ちはいつ頃から?
デビューのときからありました。お笑い芸人を目指す時に、(北野)武さんがもう映画を撮られていて。芸人をやるとき、例えばコント番組をやりたいとか、サッカーをやっていたらサッカー番組のキャスターもやってみたいとか、トーク番組をやりたいとか、いろいろありますよね。そういった感じで、売れたらいつか自分で映画を撮りたいなという思いは養成所のときからありました。
――芸人でもあることで感じているメリットは?
間とか脚本とか言ってくれる人もいますけど、それより僕としては現場の雰囲気づくりですね。僕の現場に来てくれたら、たぶん楽しんで帰ってくれると思います。芸人の仲間がいっぱい出ているのもありますけど、その空気づくりはお笑いやバラエティ番組で培ったものだと思います。もちろんシリアスな場面ではちゃんと引き締めますけど、今のところは追い込んで芝居を引き出すというタイプの映画ではないので。あと、お客さんは映画作りを見ているわけではなくて、完成した作品を観るわけですけど、でもその雰囲気も伝わっているかなと。
――ちなみにネットでの評判などは気になりますか? 最近は自虐ネタなどもされていますけど、芸人とは別として監督としての立場もあるわけですが。
悪口というのは絶対にあるわけですよ。僕の場合は特に多い(笑)。芸人が映画監督をしているというのもあるし。いろいろ言う人はいますが、いい方の意見はすごく好きです(笑)。Twitterとかインスタグラムに映画の感想を言ってくれたり、DVD持ってますとか、僕の映画が一番好きだとかいう書き込みだけを見て幸せに過ごしています(笑)。で、悪いほうは見ない。目に入ることはありますが、なるべくね。
――最後に、先ほど北野監督のお話も出ましたが、ご自身に影響を与えた人、憧れの人はいますか?
松本(人志)さんと武さんですね。武さんは映画を撮りたいと思ったきっかけになった人ですし、松本さんはお笑いをやるきっかけになった人。そのふたりの影響はありますね。あとはクエンティン・タランティーノとか、ガイ・リッチーとか、ただのファンとして好きな監督はいっぱいいますけど、松本さんと武さんは人生に関わる影響を与えてくれた人なので。お笑いを始めようとか、その中で映画を目指そうとか。道しるべとして、このおふたりです。
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■プロフィール
品川ヒロシ
1972年、東京都出身。43歳。95年にお笑いコンビ「品川庄司」を結成し、人気を博す(芸人としての名義は品川祐)。03年にオムニバス映画『監督感染』の中の短編「two shot」にて監督・脚本・主演を務める。06年には自伝的小説「ドロップ」を刊行し、09年に自らの手で映画化。高い評価を受ける。同年、「漫才ギャング」を刊行し、こちらも11年に映画化を果たした。昨年には監督第3作となる『サンブンノイチ』を手掛け、芸人としてのみならず、映画監督としての地位を着実に歩んでいる。