UWPが実現するOne Windowsの具体的な内容をアピール

Sardo氏の発言内容は、基本的に今年のBuild 2015やMicrosoft Igniteで披露した情報を改めてトレースしたものとなるので、キーポイントを大掴みに紹介する。Windows 10が生み出すチャンスとして、Sardo氏は4つの注目ポイントがあるした。1つめは巨大なターゲット市場。平野氏の説明と重複するが、Microsoftはさまざまなデバイスに対して1つの経験を提供すると述べ、この2~3年内に10億台のデバイスがターゲットになると語った。

MicrosoftのGiorgio Sardo氏。主に開発者向けにクライアント系の情報提供を行うエバンジェリストだ

Windows 10の無償アップグレードに関する日本語アナウンスをスライドで紹介したのは、de:code 2015が初めてとなる

2つめはスマートエンゲージメント。日本語に置き換えると洗練した参加スタイルというべきだろうか。Sardo氏はロック画面におすすめのアプリケーションを提供する「App Spotlight」や、アクションセンターやトースト通知からメッセージアクションに対して直接返信できる"対話型の通知"、そしてパーソナルアシスタントして働くCortanaを紹介。音声検索時に該当する情報がローカルに存在しない場合は、Webへ情報を探しに行くという。

ロック画面におすすめアプリケーションなどを紹介する「App Spotlight」。ちなみに現Insider Previewとなるビルド10122は、画像の好みは選択できるものの、アプリケーションを推薦される経験はなかった

アクションセンターの上部にテキストボックスを用意し、受信したメッセージに直接返信する機能を用意。対応アプリケーションが気になるところだ

Cortanaによる音声検索。アプリケーションが必ず先頭に来る点を強調していた。残念ながら現時点で日本語による音声検索は試せない

3つめとして、デスクトップモードとタブレットモードをシームレスに切り替えるContinuum(コンティニューム)や、スマートフォンをPCとして利用するContinuum for Phonesも紹介。残念ながら実機を用いたデモンストレーションは行われなかったが、スマートフォンを簡易PCとしてWordやExcelを利用できるシナリオは実に興味深い。以前寄稿した記事でも述べたように、デバイス側の対応や国内の正式リリースが必要だが、日本マイクロソフトの社員にWindowsスマートフォンのLumia 830を配布したことを踏まえると、Continuum for Phonesを体験するのも遠くない話になりそうだ。

Build 2015で披露したContinuum for Phonesも紹介。残念ながら実機を用いたデモンストレーションは行われなかった

4つめは「One WindowsのためのOne Store」。Sardo氏は「1つの方法でアプリケーションを開発し、配信できる」と、シームレスなシナリオを強調した。さらに統合した開発プラットフォームとして、Windows 10に搭載したアプリプラットフォーム「UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)」を紹介。ここでスピーカーは日本マイクロソフトのテクニカルエバンジェリスト高橋忍氏に切り替わった。

コンシューマーだけではなくビジネスユーザーにもメリットが大きい「One Store」

UWPアプリは、同じアプリケーションが異なるデバイスで正しく動作するものだが、高橋氏は「楽天トラベル」のUWPアプリ版をデモンストレーションとして披露。ディスプレイが小さなデバイスでは、そのサイズに応じた内容へフレキシブルに変化する仕組みを持ち、デスクトップやタブレット、スマートフォンといった異なるデバイスで同一の情報を提供することが可能だという。

日本マイクロソフトの高橋忍氏

Windows 10上のUWPアプリ。3ペインの構成で必要な情報がすべて表示される

リサイズした際も重要な情報が分かりやすく示される。写真はスマートフォンでの利用を想定しているのだろう

スピーカーがSardo氏に戻り、UWPの概要について説明された。UWPのデバイスが最適な情報を提示するUIを、「レスポンシブルデザイン」と呼ぶ。コントロールするツールを使えば、開発者は難しいレイアウトを意識せず、Microsoftがデバイスに応じた最適なUIを提供するため、UWPアプリに移行できるという。さらにUWPは、Windowsカーネルと各開発言語(ランタイム)の間に存在するため、開発はワンパッケージで進められる点も強調。大半はAPIとして提供し、2,500以上もの機能を利用できると語った。

UWPアプリを開発する際はMicrosoftが提供するツールを使うことで、デバイスに応じた最適なUIが提供されるという

UWP APIは2,500以上の機能を備え、その多くが簡単なコードで呼び出せると説明した

具体的なコード利用のデモンストレーションも行われたが、そこは割愛してエンドユーザーが気になるMicrosoft Edge(Internet Explorerに代わる新しいWebブラウザー)について紹介する。Microsoft Edgeが4,200以上もの相互運用性を改善し、Webスタンダードに準拠しながらも、ベンチマークなどの結果が好調といった点は、ご存じの方も多いだろう。注目すべきは「Hosted Web Apps」と呼ばれるWebサイトのアプリ化だ。

Microsoft Edgeが備える特徴をキーワードとして羅列したスライド。その数は4,200以上に及ぶ

HTMLやJavaScriptといったWebコンテンツをUWPアプリ化し、ストアに登録するというものだが、その一例としてWebブラウザー上で動作するフライトシミュレーターをアプリ化するデモンストレーションを披露。下図に示したように、画面右上にはXbox Liveのトースト通知が現れ、アプリケーション化していることが確認できる。さらに、アプリケーション側から利用時間の警告を発したい場合も、数行のコードで実現する様子も目の前で行われた。この様に、Sardo氏は具体的なデモンストレーションを交えてUWPの可能性や開発の容易性をアピールしていた。

Webサイトをアプリ化する「Hosted Web Apps」の概要

アプリ化したWeb上のフライトシミュレーター。右上にはXbox Liveのトースト通知、さらに右下には使用時間に関する通知表示も可能にしていた