今回のビッグデータ解析は歩道拡幅工事以前の課題をより具体的に把握する目的だった。2年ほど前に京都市が実施した四条通に関するアンケート調査により「歩道が狭くて歩きにくい」という住民の声は把握していたが、今回の調査はそれを裏付けるように四条通での滞留時間は短かった。
2015年10月末に完了予定の歩道拡幅工事では、歩道拡幅に加え現在16カ所あるバス停を4か所に集約し、さらにバス停が車道側に張り出したテラス型バス停を設置して歩行空間を確保する。
「これにより四条通は快適に買物を楽しんでいただける環境が整うはずです。買物客を呼び込むための販促事業を実施して四条繁栄会の活性化につなげるとともに、『歩いて楽しい街中エリア』をもっとアピールして観光客の滞留時間を延ばすことも重要です。具体的なイベントや広告の内容はこれから具体化させますが、そのために歩道拡幅工事が完了した後に再びビッグデータによる動向調査を実施して、通行量がどのように変化したかを確認する必要があると考えています」(小出氏)
新しいエリアマーケティング手法として注目されつつあるビッグデータ解析は、地域経済の活性化へ大いなる可能性を秘めているが、一方で利用者側の課題もあると小出氏は語る。
「Agoopに依頼したデータ分析レポートは読み込むのが大変な量で、ある程度内容を絞り込んだ報告書にまとめて四条繁栄会の役員に配布しました。また今回は生データから我々自身で分析したデータもあります。観光地の分析ですから、ある程度京都の土地勘がある者でないと分析しきれない部分もあります。例えば地元の人は金閣寺から清水寺に動く方はまずいないから、この動線は観光客だなといった考察はユーザー側で対応するしかない。こうしたビッグデータ分析手法について、もう少し便利なツールやノウハウが提供されるようになれば、ビッグデータの利用はさらに広がるでしょう」(小出氏)