――最近は『海月姫』の女装男子役で役作りが話題になりましたが、事前に準備ができるというのはそういうことですね。

あれは肉体的な条件ですからね。いくらでもやれます。

――役者としてストイックに役作りできる方が安心な面もありますか。

そうですね。なんでやるかというと、自分を安心させるためですから。自己満足です(笑)。これだけやれば、現場に素直に立てるだろうという「自分」を手に入れるため。だから、今回の作品の方が役者としてはより自分が出ますから難しいんです。

『海月姫』の時は体重50キロぐらい。誰が見ても分かるぐらい痩せたんです。その肉体にきれいにメイクをしてもらった姿を見せれば、どんな芝居をしようとも褒めてもらえることが壁にはなりました。でも、男性が女性並みに細くなったら、誰だって評価すると思います。ただ、そこからが僕としてはスタートなんです。

――ネットでも話題になっていましたよ。

あれでヤフーのトップに載った時は、「日本は大丈夫なのか」と心配になりました(笑)。自分のそんなことに興味を持ってもらえてうれしかったです。世の中にニュースとして受け止めていただいてありがたかったです。

――ネットニュースをご覧になっているんですね。

自分の記事も見ます(笑)。検索することももちろんあります。良いことだけでなく、悪いことも書かれているからイラッとしてしまうこともある。でも、それが面白いんですよね。劇場に行って、全員のお客さんの反応を聞くことはできないので、あれは良い手段だと思います。

作品が世の中に出たら自分の仕事は「終わり」としたい気持ちもありますが、そうもいきません。ブログにコメントをくださるファンの方々の声ももちろん糧にはなりますが、ダメ出しをしてくださる方の意見も僕にとっては大事なんです。

――「自分がどう思われているのか」や「ファンの存在を意識」などは、いつごろから考えるようになったのでしょうか。

ずっと、気にしてきました。もともと、そういうことが気になってしまう人間なんです。「いかに周りと調和をとるか」を気にしていたタイプだったので。

――デビュー前の高校時代、注目されることをあまり快く思わなかったと聞きました。今の職業とかなりギャップがあるエピソードですよね。

自分でも本当にそう思います(笑)。何もしていないのに”トロフィー”はもらいたくなかったんです。自分がちゃんと好きなことを作って、見せられればそれでいい。でも、本当は自分のアイデンティティは人にアピールしていきたいもので、評価してもらえたり作品として残していきたいものだったりするんですけど、それとは違う視点で注目されるのは嫌だったんです。そこはコンプレックスでしたね。

でも、当時とくらべて今は卑屈じゃないので(笑)。もっと寛大な気持ちになっていて、笑顔でこっちを向いてくれる人には笑顔でいこうと思えるようになって。自分でも大人になったと思います。

――ブログを拝見したところ、かつて福田監督の舞台をご覧になったことが書かれていて、そこには「ごっつええ感じ見て以来の衝撃」「人を笑わせるってすげーわ」と。お笑いに対する熱い気持ちがあふれている文章だと感じました。

いいこと書いてますね(笑)。お笑い大好きなんです。小さい頃から好きでしたけど、特に思いが強くなったのは大阪から上京して一人暮らしをはじめてからですね。休みの日は、家でずっと動画サイトを観ています。

面白い人は本当に尊敬します。芸人さんのすごいところは、演技をやりとおすことは役者と一緒なんですが、常に観客の反応を意識しないといけない。それが役者との大きな違いだと思います。これは僕の個人的な思いですけど、役者はどう見られていようが関係なく物語の役を演じればいい。それを監督がどう撮っていくかが大事だと考えています。

でも、芸人さんはシチュエーションや本、服から照明に至るまで。マジックのようなもので、お客さんは知らず知らずのうちに、芸人さん側に寄らされていると思うんです。あれはすごいです。そういう精密に作られているお笑いも好きだし、無計画も好き。ダウンタウンさんがすごいのは、あの方々は本番中に笑うところ。自分が耐え切れなくなるくらい面白いってすごいですよね。

――芸人さんと一緒にコントをやってみたいとは?

やってみたいですけどね……真面目にやるしかないです(笑)。僕は面白いことはできませんからね。

■プロフィール
菅田将暉
1993年2月21日生まれ。大阪府出身。2009年、テレビ朝日系『仮面ライダーW』でデビュー。2013年の主演作『共喰い』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。14年の連続テレビ小説『ごちそうさん』で多くの人に知られる存在となり、近年では『そこのみにて光輝く』(14年)、『海月姫』(14年)、『暗殺教室』(15年)などの話題作に次々と出演。現在、『ピース オブ ケイク』(15年9月6日)、『ピンクとグレー』(16年)、『二重生活』(16年)などの公開を控えている。

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