新しいメカニズムとほとんどないタッチ

MacBookで賛否両論の新しいキーボード。薄型化を極めるため、しかし打ちやすさを作り出すため、新しいメカニズムを採用しているそうです。Appleによると、新しいキーボードの構造はバタフライ方式。これまでのシザー式に比べて揺らぎが少なく、薄い構造を実現できるとのこと。またキーのどこを押してもきちんと認識されることから、キートップの面積を大きくできるというメリットもあります。

MacBookのキー。実はアルファベットのキートップは、Apple Watchで使われているフォントに変更されている。それにしてもこの薄さ。そのいっぽうで深さが打ちやすさを作り出すわけではない点も面白いところ

キーの安定性について一番分かりやすいのはスペースキー。これまでのキーを押さずに前後に揺すってみると意外と動くことに気づきます。まあ、今までやったことがなかったので知らなかったのですが。しかし新キーボードでは、この揺らぎがほとんどありません。ただ、このことはもう一つの特徴であるキーの浅さから来ているようにも思いますが、その話は後から、ということで。

キートップが大きくなることは、おそらく少しラフなポジショニングでのタイピングでも、きちんとズレずにタイピングできる、というメリットがあるかもしれません。もっとも、文章を書く仕事をしている身からすると、ミスタイプを減らすことは文章を気持ちよくキーボードから書いていく作業には不可欠なことだし、仕事の効率にも関わります。キートップがちょっと小さいからといってミスするようではダメなわけで、個人的には、キートップが大きくなることは、さほど使い勝手に左右しない、というところが本音です。

叩くな、なでろ

これもいろいろな場所で指摘してきたことではありますが、キーボードのような接触時間の長い、やや複雑なインターフェイスはおそらく、慣れたモノが一番使いやすくなっていく、という性質があると思います。現状、iMacなどに付属してくるAppleのキーボード、MacBook Air/MacBook Proに搭載されているキーボードは非常に近いタッチであることから、割と素直に移行することができるのではないか、と思います。

特に、MacBook Airを使っていて、性能面でステップアップしたい、とMacBook Proに移っても、剛性感やキーボード面の傾斜の違いはあれど、さほど大きな違和感を覚えないのではないか、と思います。ただ1点、その傾斜とエッジのせいで、MacBook Proを長時間使っていると、手首よりやや肘に近い部分にスジがついてしまうのですが。そういう「タッチの共通点」からすると、MacBookのキーボードはこれまでにないものでした。MacBook Airなどの既存のキーボードは、「薄いけれど打鍵感がある」というラインだったのですが、MacBookのキーボードは「打鍵感は指先の振動だけ」というと言いすぎでしょうか。そのため、今までみたいにキーを押し下げるつもりで指先に力を込めると、すぐに底打ちしてしまい、その力が必要以上のものだったことを伝えてくれます。

もっと柔らかに、もっと力を抜いて。今までのキーボードの感覚からすれば、「叩くな、なでろ」という意識で触れると、ちょうど良い力加減になってきます。このコツをつかみ始めると、新しいキーボードへの慣れは加速度的に進んでいきます。慣れる時間は、さほどかからないのではないか、というのが現状の評価です。